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世論調査の信憑性 [マーケティング]

朝日新聞が今回の総選挙に関する世論調査の結果を発表しました。

【朝日新聞:民主300議席うかがう勢い 朝日新聞、序盤情勢調査】
http://www.asahi.com/politics/update/0820/TKY200908190451.html

この結果によると,民主党は300議席をうかがう勢いで圧勝の可能性が高いとのこと。ただこの調査結果はどこまで信憑性があるものなのでしょうか。

このブログで再三指摘していますが,世論調査やアンケートは必ずその「実施方法」をみなくてはいけません。どのような方法で調査を行われたのか。とくに調査対象者の属性や調査日時をみるだけで,その調査がどこまで信頼できるものか,逆に少し疑ってみた方がよいのかがわかります。

そこで今回の調査ですが,調査概要は次のようなものです。

〈調査方法〉 全国300の小選挙区のうち半分の150を全体の縮図になるよう統計的に選び、18、19の両日、コンピューターで無作為に作成した番号に電話をかける「朝日RDD」方式で調査した。選挙区、比例区それぞれの投票先などを尋ね、選挙戦序盤の全体情勢を探った。有効回答の目標数は選挙区ごとに400人。  作成した番号サンプルのうち、有権者のいる家庭用番号にかかったのは全国で計9万1411件で、うち6万277人から有効回答を得た。回答率は66%。 (以上引用)

まず気になったのが調査の日時。18日19日といえば平日です。何時に(何時から何時まで)調査をしたのかわかりませんが,平日,それも多くの人にとって夏休み明け直後の期間に,いきなりかかってきた電話で回答できる人という段階で回答結果にはバイアス(偏り)があることはあきらかです。

さらに,これは以前から多くの専門家が指摘していることですが,無作為作成に番号に電話をかけるRDD方式は,最近の人々のライフスタイルを考えるとあまり妥当な調査方法とはいえません。なぜならおそらく作成された電話番号は固定電話の番号のはず(選挙区を特定できるように)。

しかし皆さんご存じのように,固定電話の加入者数は年々減り続けています。とくに若年層の単身世帯では,携帯電話しかもっていない場合が非常に多くなっています。またIP電話やSkypeなど電話通信手段が多様化して,RDD方式で抽出できない電話番号も増えています。

つまり今回の調査結果は,基本的に若年層やサラリーマンの意見を十分反映していない可能性があるということになります。若年層の投票率が上がって思いもかけないような投票行動をした場合には,民主党がこれほど議席をとれないかもしれませんし,逆にもっと圧勝するかもしれません。

もちろん,いつものテンプレート的記述=○○によっては結果が大きく変動する可能性もある=はありますが。

ただこのような調査が果たして必要なのか,最近疑問に思います。ギャンブルではないのですから,ほかの人がどう行動しようと考えているかを事前に調べるよりも,各党の政策(マニフェスト)をもっと丁寧に検証するとか,争点をわかりやすく読者に伝えるとかのほうがよほど大切だと思うのですが,いかがでしょう。



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