百貨店でＰＢ戦争 [ビジネスモデル]
ある高級寿司店がありました。このお寿司屋さんは日本近海の本マグロをはじめとして品質のよいネタを，確かな技術で握ると評判の店でした。そのため，味もさることながら値段もとびっきりだったそうです。しかしこの品質と技術を求めて，大勢のお金持ちが押しかけ，大盛況でした。しかしこのご時世。このお店でお金を惜しげもなく使ってくれていた人たちの財布は厳しくなり，毎日の客数も減っていきました。
なんとかしなければと考えた親方（店長）は，近所の飲食店を視察しました。すると行列ができているお店がありました。激安のお寿司屋さんです。回転寿司ではありませんが，材料を海外から直接購入したり，人件費をうまく抑えることで低価格を実現したそうです。
よし，これだと親方は考えました。これまでの高級品に加えて，海外からの冷凍マグロなど割安感のあるネタをラインナップ。「企業努力で価格は下げていますが，ネタはいままでどおりです」
さて，この高級店に客足は戻るでしょうか？
この記事の中にある百貨店の取り組みは，まさにこのお話に近いのではないでしょうか。
【J-Castニュース 百貨店で「PB戦争」勃発 3万円台のスーツ、菓子や調味料】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090606-00000000-jct-bus_all
この百貨店の例といい，最近話題になっているコンビニの見切り品の値下げにせよ，流通企業は自分で自分の首を絞め始めているように思えてなりません。
百貨店の経営者も，本部組織を訴えているコンビニのオーナーも切迫する今の経営問題をなんとかしなくてはならない。それはもちろんわかります。しかしそれが本当に「解決策」なのでしょうか。百貨店には百貨店の，コンビニにはコンビニのそれぞれコンセプトや社会的役割があります。それを強化するための努力ならわかるのですが，どうも違うように思えてなりません。
百貨店は「ハレ」であり「文化の発信源」という役割があります。私たちがハレの目的のために欲しい商品が，百貨店にはあるでしょうか。新しい何かを感じたいとき，百貨店が選択肢に入っているでしょうか。おそらくそれはノーです。そしてそのノーの理由が，価格でしょうか？
コンビニもそうです。破棄ロスの問題は確かに深刻ですし，コンビニ独特の会計制度に問題があることも間違いないでしょう。しかし話題となっているセブンイレブンでは，最終的な発注量の決定は，オーナーなのです。要するに大量の廃棄ロスが出るというのは，発注ミスが問題なのであり，改善すべきは「発注の仕方」なのです。発注のためのシステムに問題がある，フィールドカウンセラー（スーパーバイザー）の指導に問題がある，というのならわかりますが，値下げの問題にだけ集中することはコンビニが何を売っているのか，コンビニの競争優位は何なのかをすっかり忘れている議論のように思えます。
値下げという武器は，自分しか使えないのであれば極めて有効です。しかし現実社会では，すべての競争相手がその武器を持っています。相手を出し抜けば出し抜くほど，値下げの効果は大きくなり，逆に相手に出し抜かれると価格を維持することによるマイナス効果が大きくなります。そのためカルテルを結ぶか，相手が潰れるまで値下げは続いていくのです。
そしてにわか仕立ての価格競争は，それを得意とする競争相手，この場合は総合スーパーやディスカウンター，カテゴリーキラーなどのそれに太刀打ちできるわけがありません。餅屋は餅屋です。
さらに悪いことに，既存のお客様の信頼を失うことにもなりかねません。記事の中で百貨店の広報担当者はこんなことを言っています。
「若いお客さんにも来ていただくために、裾値（最低価格）を下げました。生産を中国に移すことで、品質レベルは落とさずに安くすることができました」
本当にそうなのでしょうか。これは２つの意味で問題です。１つは本当にそんなことができるのか。そしてもう１つは問題点は，先ほどの寿司屋の親方と昔からの常連客の会話で。
常連客「親方。安いけど前と味は変わらないんだって？」
親方 「へい。企業努力で品質レベルは落とさずに，価格を安くしました。ご安心ください。」
常連客「ふ～ん。じゃあ今まで高かったのは，単に“ムダ”が多かったからだけなんだね」
親方 「……」
なんとかしなければと考えた親方（店長）は，近所の飲食店を視察しました。すると行列ができているお店がありました。激安のお寿司屋さんです。回転寿司ではありませんが，材料を海外から直接購入したり，人件費をうまく抑えることで低価格を実現したそうです。
よし，これだと親方は考えました。これまでの高級品に加えて，海外からの冷凍マグロなど割安感のあるネタをラインナップ。「企業努力で価格は下げていますが，ネタはいままでどおりです」
さて，この高級店に客足は戻るでしょうか？
この記事の中にある百貨店の取り組みは，まさにこのお話に近いのではないでしょうか。
【J-Castニュース 百貨店で「PB戦争」勃発 3万円台のスーツ、菓子や調味料】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090606-00000000-jct-bus_all
この百貨店の例といい，最近話題になっているコンビニの見切り品の値下げにせよ，流通企業は自分で自分の首を絞め始めているように思えてなりません。
百貨店の経営者も，本部組織を訴えているコンビニのオーナーも切迫する今の経営問題をなんとかしなくてはならない。それはもちろんわかります。しかしそれが本当に「解決策」なのでしょうか。百貨店には百貨店の，コンビニにはコンビニのそれぞれコンセプトや社会的役割があります。それを強化するための努力ならわかるのですが，どうも違うように思えてなりません。
百貨店は「ハレ」であり「文化の発信源」という役割があります。私たちがハレの目的のために欲しい商品が，百貨店にはあるでしょうか。新しい何かを感じたいとき，百貨店が選択肢に入っているでしょうか。おそらくそれはノーです。そしてそのノーの理由が，価格でしょうか？
コンビニもそうです。破棄ロスの問題は確かに深刻ですし，コンビニ独特の会計制度に問題があることも間違いないでしょう。しかし話題となっているセブンイレブンでは，最終的な発注量の決定は，オーナーなのです。要するに大量の廃棄ロスが出るというのは，発注ミスが問題なのであり，改善すべきは「発注の仕方」なのです。発注のためのシステムに問題がある，フィールドカウンセラー（スーパーバイザー）の指導に問題がある，というのならわかりますが，値下げの問題にだけ集中することはコンビニが何を売っているのか，コンビニの競争優位は何なのかをすっかり忘れている議論のように思えます。
値下げという武器は，自分しか使えないのであれば極めて有効です。しかし現実社会では，すべての競争相手がその武器を持っています。相手を出し抜けば出し抜くほど，値下げの効果は大きくなり，逆に相手に出し抜かれると価格を維持することによるマイナス効果が大きくなります。そのためカルテルを結ぶか，相手が潰れるまで値下げは続いていくのです。
そしてにわか仕立ての価格競争は，それを得意とする競争相手，この場合は総合スーパーやディスカウンター，カテゴリーキラーなどのそれに太刀打ちできるわけがありません。餅屋は餅屋です。
さらに悪いことに，既存のお客様の信頼を失うことにもなりかねません。記事の中で百貨店の広報担当者はこんなことを言っています。
「若いお客さんにも来ていただくために、裾値（最低価格）を下げました。生産を中国に移すことで、品質レベルは落とさずに安くすることができました」
本当にそうなのでしょうか。これは２つの意味で問題です。１つは本当にそんなことができるのか。そしてもう１つは問題点は，先ほどの寿司屋の親方と昔からの常連客の会話で。
常連客「親方。安いけど前と味は変わらないんだって？」
親方 「へい。企業努力で品質レベルは落とさずに，価格を安くしました。ご安心ください。」
常連客「ふ～ん。じゃあ今まで高かったのは，単に“ムダ”が多かったからだけなんだね」
親方 「……」
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