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コンビニの深夜営業規制問題 [環境問題]

CO2削減絶対主義がついにここまでやってきました。今や国際的基軸通貨と言えばドルではなくてCO2なのではないかと思うぐらい,この削減量が世界を動かす重要な単位となっています。

そして魔女狩のごとく,とにかくCO2を排出するものを抑制できればよいという風潮がはびこっています。以前も書きましたが,ゴミの分別回収で生じる洗浄用の水の無駄遣いの問題など,他の環境負荷はさておいてもCO2を減らせ減らせの大合唱です。

その波がコンビニエンスストアにまで広がってきました。コンビニの深夜営業規制問題です。埼玉,神奈川,京都と,その動きは拡大の一途をたどっています。

【日経新聞】http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080615AT3B1304214062008.html

確かに,神奈川県の松沢知事が言っているように(http://www.jiji.com/jc/c?g=eco&k=2008061700832),深夜にこうこうと電気がついているコンビニはいかにも環境に悪そうです。

しかしこれは「いかにも」環境に悪る「そう」な話であって,どうもみなさんはきちんとした計算をしていなったようです。業界団体が数値を上げて反論してきました。

【日経新聞】http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080620AT1D1908Y19062008.html

業界団体の主張の重要なポイントはこうです。

①仮に深夜営業をやめても,冷蔵庫などは止めることができない。照明を切ることによって得られるCO2排出削減効果は5-6%程度である。

②その一方で,商品配送などが昼間に集中することで渋滞の発生などで配送効率が悪化。その分排出量が2%アップする。

③その結果差し引き3-4%程度しか削減効果はないですよ。

というものです。この3-4%が多いか少ないかは議論が分かれるところですが,業界団体はさらに畳み込みます。深夜の駆け込み所としての防犯効果など,社会インフラとしての価値もあるはずで,3-4%の削減のためにこの価値を捨ててもよいのか,という論法です。なかなかうまい作戦です。

実際のところ,コンビニエンスストアの売り上げの2割は深夜時間帯で稼ぐと言われています。そのため,この分を規制されるとコンビニエンスストアのビジネスモデルの根幹を崩されてしまうので,それは絶対に許せないというのが本音なのでしょう。

ただ一方で,業界団体が掲げる「建前」にも確かに一理あります。コンビニはもはや単なる小売業ではなく,社会インフラの一つとなっています。それも財政難で国や地方公共団体,大企業がおざなりにしてきた部分を支えている面が多々あります。

例えばトイレ。近年公共トイレがどんどんなくなっています。その機能を担っているのはコンビニです。また防犯面もそうです。駅前であっても,お巡りさんがいない交番はたくさんあります。何か事件があっても,交番内の内線電話で呼び出さなくてはならず,緊急事態には対応できません。とりあえずコンビニは非難されている「明るさ」で,一定の防犯効果を生み出しています。

他にも大手銀行が統廃合することで利便性が低下したATM。不便な郵便局のサービスの代替機能となった民間宅配便の集配拠点。地震における飲食料の物流など,コンビニが果たしている役割は,じつは私たちが考えている以上に幅広く,そして重要なものになっています。

「環境」「CO2」と言えば思考停止してしまう人が激増した昨今,もっと冷静に,そして合理的な議論をすべきではないかと思います。皮肉を込めて,環境を制する人が第3の王として世界に君臨する,といった人がいます(第1,第2はそれぞれローマ法王=宗教,米国大統領=政治)。環境という大義を掲げるだけで,世界が(というより日本人が)無批判に思考を止めてしまうことを危惧します。



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神奈川県鎌倉市七里ガ浜町内会

私は神奈川県鎌倉市七里ガ浜町内会の者なのですが、七里ガ浜海岸にセブンーイレブンが出来てから、
暴走族、改造車族、旧車会、深夜花火族などが集まり、一晩中続くロケット花火の騒音で、
住民の中には不眠で入院するものも出ました。
セブンーイレブンに買い物客以外停めさせるなと言っても、完全無視。
そこで、今では、鎌倉市民の税金を投入して警備員を雇い、7月1日から8月31日までの午後9時から朝の5時まで、
毎日七里ガ浜海岸を警備しているような状態です。
セブンーイレブンは、「巨悪」そのものですね。
七里ガ浜セブンーイレブンは、深夜でも2~3分おきに車が入って来て、驚きます。
暴走族の苦情も多く、毎日、毎晩、110番され、警察が取り締まりに来ますが、
セブンーイレブン駐車場の中なので、道路交通法で取り締まれず、警察も苦慮しています。
あれは鎌倉とは思えない光景で、環境破壊そのものです。
一度、見てやってください。驚きますから。
そのあまりにヒドイ様子を写真やビデオで撮って、いろいろな人が公開してくれると嬉しいです。
by 神奈川県鎌倉市七里ガ浜町内会 (2008-07-18 11:41) 

ドクター

神奈川県鎌倉市七里ガ浜町内会 さん

コメントありがとうございます。

是非ご理解いただきたいのは,私の話はマクロ的なことだということですし,この記事でもっとも大切なことは「多角的に」ものをみることの大切さです。

個別事案で考えれば,そのようなお話があることはもちろん承知しております(私の近所でもそれに近い話はあります)し,大変お気の毒なこととは存じます。このセブンイレブンのオーナーは問題だと思います。

ただそれは鎌倉のそのセブンイレブンが問題なのであって,その個別事案をもって全体を悪とすることは,少なくとも私は同意できません。

逆の例として,ある女性がセブンイレブンの存在によって命を救われたことがあるわけですが,その1つの事例をもってセブンイレブンが日本を救う存在,と言われると,おそらく違和感を覚えられることでしょう。

誤解なきように申し上げますが,個別の事例をむしろというわけではありません。大切なことは,もっと全体を見る視点であり,一つの方向に対して無批判に従属しない姿勢であるということだと私は考えます。 これが今の日本人には決定的に欠けているように思います。どんなによいことをした人も,1度問題を起こすと,過去のすべてを否定してしまうところがありますから。

少なくともチェーン全体としての不要論と,あるお店の不要論はわけて議論すべきと考えます。むろんチェーン本部には,フランチャイズ契約の打ち切りも含めた指導を要請されていることとは思いますが。
by ドクター (2008-07-21 17:21) 

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