学力低下の原因

最近，日本人の学力が低下を危惧させるようなデータが次々に出てきています。ゆとり教育によって，いわゆる詰め込み型の知識が低下しているだけでなく，ＯＥＣＤ（経済協力開発機構）が実施したＰＩＳＡ（国際学習到達度調査）の結果が示すように，本来ゆとり教育が目指していた，考える力や知識を活用する力も先進諸国の平均値よりも低いことになっています。

詳しい記事はここ
①　http://sankei.jp.msn.com/life/education/071206/edc0712060249000-n1.htm
②　http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007120502069784.html

その原因については，様々な理由が論じられています。最大の戦犯とされているのは，先に触れた「ゆとり教育」。授業時間を減らした結果，子供の学力が大きく低下してしまったというものです。

また地域間格差を分析することによって，いくつかの学力低下理由も指摘されています。例えば大阪。大都市圏では際だった成績の低さなのですが，その理由の仮説として「朝食」「早寝早起き」といった生活習慣が論じられています。
詳しい記事はここ　
①　http://sankei.jp.msn.com/life/education/071202/edc0712022221000-n1.htm
②　http://sankei.jp.msn.com/life/education/071202/edc0712022221000-n2.htm

またある番組では，離婚率や失業率，携帯電話の保有率との相関を指摘していました。確かに成績の悪い地域では離婚率や失業率が高く，その一方で子供の携帯電話保有率が平均より高くはなっていました。

しかし，本当にこのようなことが問題なのでしょうか。もちろんデータ上はそのような傾向があるのでしょうが，もっと本質的な原因は，先に紹介した東京新聞の記事の中程にある「努力値」の低さに表れているような気がしてなりません。
東京新聞　http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007120502069784.html

この努力値というのは，昨日の日刊ゲンダイの記事によれば，テストの最後に「最大の努力値を１０として，テストに費やしたのはどのくらいか」という質問らしいでのですが，記事にもあるように日本は6.12。上位のフィンランドは8.37，台湾は8.10だそうです。このスコアは平均値を大きく下回っているだけでなく，成績上位15カ国中最下位だそうです。

ただ面白いことに，「点数が学校の成績に含まれる，と言われたら」と聞くと，8.08に上昇するそうです。確かに私の学生も，「ここは試験に出るかも」というと途端にノートを取り出します。この真剣さに欠ける姿勢と言いますか，要領よく物事をこなそうとする態度と言いますか，このあたりが成績に大きな影響を与えていることを認識しなければ，抜本的な解決にならないように思います。

誤解を恐れずに言えば，成績が悪いのは周囲の環境の問題ではなく，要は真剣に勉強しないから。当たり前ですがこれに尽きると思います。私も勉強していた方ではないので，偉そうなことは言えませんが，私たちが子供の頃は勉強しないことは「悪」でした。成績が悪いことは，それなりに負い目を感じることであり，よくないことでした。ですから出来ないなら出来ないなりに，一生懸命なんとかしようとはしていました。親もくどくどと小言を言ってきました。しかし近年は，できないと本人はあっさりあきらめてしまいますし，周囲もそれを許してしまう風潮があるように思います。

こういうと，勉強だけが人生ではない，という批判が出てきそうですが，それはその通りです。私たちの時代にもそんな子供はたくさんいました。しかしそのような人たちの多くは，早いうちに勉強という世界からドロップアウトして，専門的なスキルを身につける職人の世界に飛び込んでいきました。当然，そこでも厳しく，真剣な努力を求められて，鍛えられていました。

どちらの世界を選択するにしても，格好悪いぐらいの努力が必要ですし，それをわからせるためにも，競争や勝ち負けをはっきりと理解させることが大切です。負けを理解しないことには，今後どこを努力しなければいけないかわかりませんから。

そして私たち大人は，子供たちにもっと努力することを「強いる」べきですし，競争を「煽って」もよいのではないかと思います。その上で，一生懸命努力した上で限界を感じた子供に対して，別の道もあることを教えてあげれれば。今の道の限界を知らずして，次の道を目指してもまた同じ事の繰り返しになります。