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楽天とTBS [ビジネスモデル]

しばらく鳴りを潜めていた楽天とTBSの買収劇ですが,再び動き出しました。http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070420NTE2INK0119042007.html 楽天サイドが20%超の株式取得をTBSに通告,連結対象化も視野に入れる方針を固めたようです。さらには三木谷氏らを社外取締役としても送り込むことを狙っています。

ビジネス政治学とでも呼んだ方がよいのかもしれない,両社の暗闘がこれからクローズアップされてくるのでしょうが,私はこの問題をビジネスモデルの視点からとらえてみたいと思っています。楽天が買収を成立させたとして,本当にシナジー効果が生まれるのかということです。

私の結論はノーです。理由は以下のようなものです。

①日本人は,多チャンネルやペーパービューを受け入れない。
 ケーブルテレビが普及して,はや10年以上を経過していますが,結局市場規模は増えていません。日本人はテレビ=タダという気持ちが染みついていますし,いわゆる専門チャンネルへのニーズが基本的にないことは明らかです。楽天が目指そうとしている,ネットテレビはケーブルテレビの延長線上にあります。このモデルが成功するとは思えません。

②楽天の成功はマスの否定,放送局はマスへの迎合
 両社のビジネスモデルは,根本的に異なっています。楽天はロングテールという言葉に代表されるように,とにかく出店商店を増やして,楽天に来れば何でも揃うという多品種少量型ビジネスモデル。
 これに対して放送局は,徹底したマス志向です。大衆をどれだけ引きつけることができるか,1つの番組でどれだけの広告主を集めることができるか。これが勝負です。
 両社のモデルが違うからこそ,シナジー効果があるという意見があるかもしれません。しかし楽天側にはマス型ビジネスモデルの経営感覚がないはずです。これは規模を重視し,大衆車をより多く世に送り出そうとするトヨタが,小規模で高級車,スポーツカーを得意とするポルシェの経営ができないことと同じです。よい悪いではなく,感覚がわからないのです。これは先日お話ししたパラダイム論に通じるところがあります。

③パソコンで放送は見ない
 パソコンとテレビの境界線がどんどん崩れてきていると言われていますが,それでもパソコンでテレビを見る人は少数派です。私が思うに,テレビはオフタイム,パソコンはオンタイムのものだと思うからです。スイッチ1つですぐ起動するテレビビジネスは「受動的」です。相手がどんどん提供してくれるコンテンツに身を任せるビジネスモデル。
 これに対してパソコンを介したビジネスは「能動的」です。自分から何かを求めてはじめて情報を得るビジネスモデルなわけです。スイッチ1つ取り上げても,「さあパソコンを立ち上げよう」と思っているわけです。テレビではあり得ません。

他にも理由はありますが,とにもかくにもビジネスモデルがここまで違うとうまくいくとは思えません。

ただ放送局に手を出したITベンチャーの旗手たちは,悲惨な末路をたどっています。偶然か意図的なものかは知りませんが,三木谷さんは虎の尾を踏んだことにならなければよいのですが。

3大ITビジネス経営者をうまく比較している本を紹介します。

ビジネス戦国時代 平成の三大武将―堀江信長・三木谷秀吉・孫家康

ビジネス戦国時代 平成の三大武将―堀江信長・三木谷秀吉・孫家康

  • 作者: 宮崎 哲也
  • 出版社/メーカー: 三修社
  • 発売日: 2005/07
  • メディア: 単行本

ビジネスモデル論の基礎を学ぶならこれがオススメ。

事業システム戦略―事業の仕組みと競争優位

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  • 作者: 加護野 忠男, 井上 達彦
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2004/03
  • メディア: 単行本


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