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NTTの人事 -きれい事ではないMOT [MOT]

NTTの次期社長が内定したとのニュース。http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20070418i312.htm

これまでNTTでは事務方出身者と技術出身者が交互に社長に就任するという,いわゆるたすき掛け人事が慣例でした。ところが今回の人事はこの慣例を破り,二代続けて事務方出身者が社長になるというものです。

おそらく多くの方のご意見は,今の時代あたりまえだろうということなのでしょうが,ただ技術職のモチベーションがどう変化するのかに注目する必要があります。つまり研究開発の士気が低下しないのかという問題です。

私はかつてある化学品メーカーの技術部門のコンサルティングを手がけたことがあります。がちがちの文科系である私は,技術職に対してある幻想を持っていました。彼らは人事など政治的なことには疎く,好きな研究を自由にやれればそれでよい。職人たちの集まりなのだと。それだけにいかに面白い研究テーマを彼らに与えることができるのかが,研究開発組織では重要なのだと勝手に思いこんでいました。

しかし彼らも人間です。人事関係の情報には非常に敏感で,とくに幹部社員に技術系が登用されなかったときの落ち込み,怒りは半端なものではありませんでした。研究開発のパフォーマンスは急激に下がり,新しい研究は滞りました。

技術者は,文科系のマネージャーは技術のことを理解できない,という思いこみがあります。まあこれは8割方正しいのですが,自分たちのことを理解できない人の下では働きたくないわけです。事務方でもそうですが,技術の場合,その情報を理解することは会計だの戦略だのを理解するより相当難しくなりますから,反発も余計高まります。

出井政権下のソニーでも,同じような現象が起きたと言われています。現在のソニーの不振,とくにものづくりに関する能力の低下は,マーケティングを重視して技術を過小評価したといわれる出井政権時代にそのタネが巻かれていたとも言われています。

技術とマーケティング。この2つは企業の両輪ですから,どちらかだけが大切ということはない,と私は確信しています。しかし,技術者のモチベーション問題を読み違えると,その影響はマーケティング部門で起きるそれとは比べものにならないくらい大きなものになる可能性があります。

MOTの教科書では出てこない,もっとドロドロした部分にこそ,技術開発マネジメントの難しさは潜んでいるのかもしれません。

私はソニーの出井さんが大好きです。ただ批判的に見ることも大切です。ソニーと出井革命のことをもっと知りたい人はこれがオススメです。

迷いと決断

迷いと決断

  • 作者: 出井 伸之
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/12/14
  • メディア: 新書


ソニーの「出井」革命―リ・ジェネレーションへの挑戦

ソニーの「出井」革命―リ・ジェネレーションへの挑戦

  • 作者: 立石 泰則
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1998/07
  • メディア: 単行本

またMOTの教科書ではこれが秀逸では。

MOT“技術経営”入門

MOT“技術経営”入門

  • 作者: 延岡 健太郎
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 単行本


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コメント 2

はじめまして。
突然失礼いたします。

ドクターさんの記事にはいつも「なるほど~」と感心させられております。
今回は特に納得させられた内容でしたので、思わず足あとを残させていただきますした。
これからもドクターさんのブログを応援しております。がんばってください。
by (2007-04-19 18:59) 

ドクター

はじめてのnice! ありがとうございます。大変うれしく思っております。私のゼミ生にも「こういち」がおりました。何かのご縁かも。私もこういちさんのブログを拝見させていただくようにいたします。
by ドクター (2007-04-19 22:48) 

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