民主党のマニフェスト [ビジネス一般]
総選挙が近づき、各党が選挙公約やマニフェストを発表しはじめました。
※選挙公約とマニフェストの違いはこちらで【Wikipedia】
その中でも次期政権に一番近いと思われる民主党のマニフェストが、昨日発表されました。このブログの性格からして，その内容についてはあえてコメントしません。ここではその後巻き起こっているこのマニフェスト批判について少し。
自民党は競争相手なので、ライバルの製品（マニフェスト）を叩くのは当然。ただマスコミは評論家の立場、もしくは流通業者の立場で消費者（選挙民）に正しく、有益な情報を提供しなくてはいけません。しかしあまり上手な情報提供とはなっていないように思います。
私が首を傾げたくなるのは次の２つです。
（１）木を見て森を見ず
今回の民主党マニフェストに対する論評（批判）は、個別の政策に対するそれが全面に出ています。例えば高速道路の無料化や子ども手当など。しかしマニフェストとは「政権公約」であり、企業でいうところの「経営中期計画」に近いわけです。これからの国家政策の基本方針をいかにするつもりなのか。そのグランドデザインを示すのがマニフェスト。これに対して先に挙げたような個別政策は「個別事業計画」であり「マーケティング戦略」なわけです。よってマニフェストの評価とは、まずこの基本方針を是とするか非とするかから入らないと駄目です。
ただ残念ながら，日本人は伝統的に（？）重箱の隅をつつくのが大好きです。いわゆる木を見て森を見ず。学会でもそうなのですが，データ収集の方法や不備，業界に関するマニアックなことがらなどに質問が集中し、肝心の研究課題やロジックについての議論ができないことが多々あります。まあ学会の話はともかく，企業でもこれはよくある話。日本企業はボトムアップ型の意思決定を採用し，個別事業計画を積み上げた上で全体戦略を決める（じつはそれで全体戦略は決まらないのですが）。そういう企業経営が続いてきました。
しかし戦略的発想とはこれとはまったく逆で、全体方針を決めた上で，それを個別戦略，戦術にブレークダウンさせていきます。マニフェストはまさにこれなわけです。ですから全体戦略への評価なしに、個別政策を評価することと事態おかしなことなのです。
（２）財源問題
ライバル政党だけでなく，マスコミも民主党案に対しては二言目には「財源があいまい」という批判をします。まるでテンプレートに基づいて記事を書いているかのようです。多くの有権者もこの論調を何度も聞くにつれ，「野党はいつも財源があいまい」と思っているかもしれません。もちろんマニフェストは実現可能性が大切ですから、財源問題は大切です。
ただ野党が出すマニフェストや対案に，正確な財源の裏付けを用意することができるわけがありません。なぜなら国家財政に関する正確な情報を持っていないのですから。企業買収でもそうですが，人様の台所事情は外からでは完全には把握できないのです。実際に買収してみて，その会社の財務や資産に関する情報を「当事者として」調査しないことには，その会社にいくらのお金や資産があるのかなど絶対にわからないのです。つまりそれまではすべて「推測」でプランを立てるしかありません。
企業買収を何度も行ってきているエキスパートでも，事前調査ですべてを見ぬことができず，買収してみた後に「なんだこりゃ」ということに直面することが少なくないそうです。今回は国家です。国家予算の問題は、政権当時者でなければ絶対に詳細はわからないのです。
日本のマスコミは，まだ「マニフェスト」の扱いに慣れていないのでしょう。その点，海外のメディアはこの手の情報のさばき方が上手です。ぜひ読み比べてみてください。そしてもうすぐ出される自民党のマニフェストも，同じような視点で分析してみてください。
【ロイター：政治主導の実現に5原則＝民主党マニフェスト】
http://jp.reuters.com/article/economicPolicies/idJPJAPAN-10233820090727
【朝日新聞：民主党がマニフェスト発表 主要政策に初年度７．１兆円】
http://www2.asahi.com/senkyo2009/news/TKY200907270365.html
※選挙公約とマニフェストの違いはこちらで【Wikipedia】
その中でも次期政権に一番近いと思われる民主党のマニフェストが、昨日発表されました。このブログの性格からして，その内容についてはあえてコメントしません。ここではその後巻き起こっているこのマニフェスト批判について少し。
自民党は競争相手なので、ライバルの製品（マニフェスト）を叩くのは当然。ただマスコミは評論家の立場、もしくは流通業者の立場で消費者（選挙民）に正しく、有益な情報を提供しなくてはいけません。しかしあまり上手な情報提供とはなっていないように思います。
私が首を傾げたくなるのは次の２つです。
（１）木を見て森を見ず
今回の民主党マニフェストに対する論評（批判）は、個別の政策に対するそれが全面に出ています。例えば高速道路の無料化や子ども手当など。しかしマニフェストとは「政権公約」であり、企業でいうところの「経営中期計画」に近いわけです。これからの国家政策の基本方針をいかにするつもりなのか。そのグランドデザインを示すのがマニフェスト。これに対して先に挙げたような個別政策は「個別事業計画」であり「マーケティング戦略」なわけです。よってマニフェストの評価とは、まずこの基本方針を是とするか非とするかから入らないと駄目です。
ただ残念ながら，日本人は伝統的に（？）重箱の隅をつつくのが大好きです。いわゆる木を見て森を見ず。学会でもそうなのですが，データ収集の方法や不備，業界に関するマニアックなことがらなどに質問が集中し、肝心の研究課題やロジックについての議論ができないことが多々あります。まあ学会の話はともかく，企業でもこれはよくある話。日本企業はボトムアップ型の意思決定を採用し，個別事業計画を積み上げた上で全体戦略を決める（じつはそれで全体戦略は決まらないのですが）。そういう企業経営が続いてきました。
しかし戦略的発想とはこれとはまったく逆で、全体方針を決めた上で，それを個別戦略，戦術にブレークダウンさせていきます。マニフェストはまさにこれなわけです。ですから全体戦略への評価なしに、個別政策を評価することと事態おかしなことなのです。
（２）財源問題
ライバル政党だけでなく，マスコミも民主党案に対しては二言目には「財源があいまい」という批判をします。まるでテンプレートに基づいて記事を書いているかのようです。多くの有権者もこの論調を何度も聞くにつれ，「野党はいつも財源があいまい」と思っているかもしれません。もちろんマニフェストは実現可能性が大切ですから、財源問題は大切です。
ただ野党が出すマニフェストや対案に，正確な財源の裏付けを用意することができるわけがありません。なぜなら国家財政に関する正確な情報を持っていないのですから。企業買収でもそうですが，人様の台所事情は外からでは完全には把握できないのです。実際に買収してみて，その会社の財務や資産に関する情報を「当事者として」調査しないことには，その会社にいくらのお金や資産があるのかなど絶対にわからないのです。つまりそれまではすべて「推測」でプランを立てるしかありません。
企業買収を何度も行ってきているエキスパートでも，事前調査ですべてを見ぬことができず，買収してみた後に「なんだこりゃ」ということに直面することが少なくないそうです。今回は国家です。国家予算の問題は、政権当時者でなければ絶対に詳細はわからないのです。
日本のマスコミは，まだ「マニフェスト」の扱いに慣れていないのでしょう。その点，海外のメディアはこの手の情報のさばき方が上手です。ぜひ読み比べてみてください。そしてもうすぐ出される自民党のマニフェストも，同じような視点で分析してみてください。
【ロイター：政治主導の実現に5原則＝民主党マニフェスト】
http://jp.reuters.com/article/economicPolicies/idJPJAPAN-10233820090727
【朝日新聞：民主党がマニフェスト発表 主要政策に初年度７．１兆円】
http://www2.asahi.com/senkyo2009/news/TKY200907270365.html
- 作者: 北川 正恭
- 出版社/メーカー: 生産性出版
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
- 作者: 金井 辰樹
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/10/18
- メディア: 新書
- 作者: 池上 彰
- 出版社/メーカー: オクムラ書店
- 発売日: 2008/02
- メディア: 単行本
コメント 0