セブンに公取委が排除命令(2) [ビジネスモデル]
昨日(http://d-mizuno.blog.so-net.ne.jp/2009-06-22)の続きです。どちらかというと,コンビニに対して批判的な記事が多いため,このブログでは「あえて」コンビニ寄りと思われる論調でコメントしたいと思っています。世の中,一つの方向で固まるのはよくないですから。
各紙ともこの問題を大きく取り上げていますが,産経新聞の記述が比較的よくまとまっているように思います。
【産経新聞 セブンへの排除命令、コンビニ経営に打撃 事業モデル転換迫る】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090622/biz0906222210020-n1.htm
さて今回の公取委からの命令が,コンビニエンスストア業界に及ぼすであろう第2の影響は,各店舗の経営が悪化してしまう恐れがあることです。
いくつかの記事の中に,オーナーもしくは元オーナーの「本部から大量の商品を購入するように“圧力”があり,それが廃棄ロスを増やした」というような言葉が使われていました。厳密にいうとこれはおかしな話です。
昨日説明したように,コンビニエンスストアはフランチャイズ方式を主に採用しているため,本部とオーナーの関係は対等です。もちろん現実的に対等ということはありえませんが,少なくとも各コンビニにのオーナーは一国一城の主であり,その店の経営権はその人にあります。
当然ですが,商品の発注量を決めるのは最終的にはオーナーです。セブンイレブンの場合,本部は世界屈指と言われる情報システムや,フィールドカウンセラーと呼ばれる店舗指導員の推奨など,サポートするだけで,どの商品を,どれだけ発注するのかは店舗のオーナーが決断しているのです。会社で言えば,すべての商品発注は社長の決裁がおりているのです(機械が自動的に発注しているわけではありません)。
つまり,廃棄ロスが出るというのは店舗のオーナーの発注ミスが大きな原因となっているわけです。むろんセブンイレブンの本部は商品の欠品を強く嫌う傾向がありますので,情報システムも店舗指導員も多めの発注を推奨していた可能性は多分にあります。それにしても,経営権のあるオーナーが発注ミスの責任を一方的に本部に押し付けるような発言は,決して納得できるものではありません。
少し話がずれましたが,安易な値引きはこの発注精度をさらに低下させる恐れがあります。発注ミスをしたその店舗は自分の責任なのでよいのですが,周りの店舗に大きな迷惑をかけます。正確な需要予測を立て仕入をしたのに,近隣の別の加盟店が発注ミスから大幅な値引きを始めると,当然ですがまじめに予測をした店舗も引きずられて値引きせざるを得ません。
また今回,多くの人たち(とくに値引き販売を主張するオーナー)が忘れていることがあります。それは同じ商品であるにも関わらず,値引き商品と定価商品が混在するということ。今回話題となっているお弁当ですが,賞味期限切れで半額で処分するとしましょう。しかしそれが機能するのは,瞬間的に在庫をゼロにする場合のみです。いわゆる売り切りです。
ところが現実の場面では,棚に商品が並んでいない状態を作る訳には行きません。例えばお弁当が残り2個になったら,新しいお弁当を8個補充するわけです。このとき,賞味期限が切れそうな2個は半額で,新しいお弁当8個は正価で販売されるわけです。
スーパーもタイムセールスや閉店間際の見切り販売をしますが,これは閉店時間があるから成り立つ手法です。24時間オープンし,商品補充を次々に行うコンビニでは基本的になじみません。お客さんは値引き商品を求めた買い物をし,結果的に利益率の高いお弁当や総菜から利益を得ることができなくなる可能性があります。
消費者にとって値引き競争はありがたいように思うかもしれませんが,価格設定で一番大切なことはその価格が「適正」であること。安売りのスーパーが開いている時間帯でも,わざわざコンビニで定価のポテトチップスを買う人がいるのはなぜでしょう。それはその人にとってその価格が「適正」だから。家が近い,ここでしか売っていないジュースと一緒に買えるから,などです。
この適正価格という考え方が破綻すると,デフレや新しいビジネスが生まれてこないなど,社会全体がじつは大きな損害をうけるわけです。
コンビニの強みは,情報システムをうまく使いながら適正な発注を行うこととで,鮮度の高い商品を,高い利益率で販売することでした。この発注精度の不備を指摘するならまだしも,安易に価格競争に走ることは,この強みである発注力を低下させて,お店の利益を圧迫する可能性があるわけです。昨日も言いましたが,スーパーと価格で競争してもコンビニは勝てないのです。いやスーパーを競合とした時点で,コンビニの役割は終わっているのかもしれません。
明日に続く
各紙ともこの問題を大きく取り上げていますが,産経新聞の記述が比較的よくまとまっているように思います。
【産経新聞 セブンへの排除命令、コンビニ経営に打撃 事業モデル転換迫る】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090622/biz0906222210020-n1.htm
さて今回の公取委からの命令が,コンビニエンスストア業界に及ぼすであろう第2の影響は,各店舗の経営が悪化してしまう恐れがあることです。
いくつかの記事の中に,オーナーもしくは元オーナーの「本部から大量の商品を購入するように“圧力”があり,それが廃棄ロスを増やした」というような言葉が使われていました。厳密にいうとこれはおかしな話です。
昨日説明したように,コンビニエンスストアはフランチャイズ方式を主に採用しているため,本部とオーナーの関係は対等です。もちろん現実的に対等ということはありえませんが,少なくとも各コンビニにのオーナーは一国一城の主であり,その店の経営権はその人にあります。
当然ですが,商品の発注量を決めるのは最終的にはオーナーです。セブンイレブンの場合,本部は世界屈指と言われる情報システムや,フィールドカウンセラーと呼ばれる店舗指導員の推奨など,サポートするだけで,どの商品を,どれだけ発注するのかは店舗のオーナーが決断しているのです。会社で言えば,すべての商品発注は社長の決裁がおりているのです(機械が自動的に発注しているわけではありません)。
つまり,廃棄ロスが出るというのは店舗のオーナーの発注ミスが大きな原因となっているわけです。むろんセブンイレブンの本部は商品の欠品を強く嫌う傾向がありますので,情報システムも店舗指導員も多めの発注を推奨していた可能性は多分にあります。それにしても,経営権のあるオーナーが発注ミスの責任を一方的に本部に押し付けるような発言は,決して納得できるものではありません。
少し話がずれましたが,安易な値引きはこの発注精度をさらに低下させる恐れがあります。発注ミスをしたその店舗は自分の責任なのでよいのですが,周りの店舗に大きな迷惑をかけます。正確な需要予測を立て仕入をしたのに,近隣の別の加盟店が発注ミスから大幅な値引きを始めると,当然ですがまじめに予測をした店舗も引きずられて値引きせざるを得ません。
また今回,多くの人たち(とくに値引き販売を主張するオーナー)が忘れていることがあります。それは同じ商品であるにも関わらず,値引き商品と定価商品が混在するということ。今回話題となっているお弁当ですが,賞味期限切れで半額で処分するとしましょう。しかしそれが機能するのは,瞬間的に在庫をゼロにする場合のみです。いわゆる売り切りです。
ところが現実の場面では,棚に商品が並んでいない状態を作る訳には行きません。例えばお弁当が残り2個になったら,新しいお弁当を8個補充するわけです。このとき,賞味期限が切れそうな2個は半額で,新しいお弁当8個は正価で販売されるわけです。
スーパーもタイムセールスや閉店間際の見切り販売をしますが,これは閉店時間があるから成り立つ手法です。24時間オープンし,商品補充を次々に行うコンビニでは基本的になじみません。お客さんは値引き商品を求めた買い物をし,結果的に利益率の高いお弁当や総菜から利益を得ることができなくなる可能性があります。
消費者にとって値引き競争はありがたいように思うかもしれませんが,価格設定で一番大切なことはその価格が「適正」であること。安売りのスーパーが開いている時間帯でも,わざわざコンビニで定価のポテトチップスを買う人がいるのはなぜでしょう。それはその人にとってその価格が「適正」だから。家が近い,ここでしか売っていないジュースと一緒に買えるから,などです。
この適正価格という考え方が破綻すると,デフレや新しいビジネスが生まれてこないなど,社会全体がじつは大きな損害をうけるわけです。
コンビニの強みは,情報システムをうまく使いながら適正な発注を行うこととで,鮮度の高い商品を,高い利益率で販売することでした。この発注精度の不備を指摘するならまだしも,安易に価格競争に走ることは,この強みである発注力を低下させて,お店の利益を圧迫する可能性があるわけです。昨日も言いましたが,スーパーと価格で競争してもコンビニは勝てないのです。いやスーパーを競合とした時点で,コンビニの役割は終わっているのかもしれません。
明日に続く
セブン-イレブンおでん部会―ヒット商品開発の裏側 (朝日新書 34)
- 作者: 吉岡 秀子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2007/03/13
- メディア: 新書
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