セブンに公取委が排除命令(1) [ビジネスモデル]
このブログでも何度か取り上げてきたコンビニエンスストアの値引き制限問題。予想はされていましたが,ついに正式に公取委から排除命令が出ました。
【産経新聞: セブンに公取委が排除命令 値引き制限を「不当」と認定】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090622/biz0906221553005-n1.htm
これはコンビニ業界にとって大きな変化を促す,重大な意味を持っていると考えます。
確かに多くのコンビニエンスストアはフランチャイズ契約です。つまり同じ看板を掲げていても,各店舗は資本的には独立した存在です。ですから直営店であるジャスコやダイエーのように,すべての店舗で価格を本部が統制することは許されないのが原則です。
ただその一方で,全国のお店をチェーンストアとして効率的に機能させ,規模の経済性を得るためには,ある程度の統制が必要です。そこですべての加盟店は,フランチャイズ契約の遵守が求められます。その狭間で生じたのが,今回の値引き制限問題です。
おそらく今回の命令により,過剰在庫(仕入れすぎた)商品を値引きして販売するお店が増えてくることが予想されますが,これはコンビニ業界全体を揺るがす事態に発展するのではと私は危惧します。極論すれば,コンビニという業態がなくなってしまう引き金にもなるのではとすら思っています。
コンビニが提供している価値は,その名が示す通り「便利さ」です。最初は長時間営業。多くのお店が朝10時から夕方までの営業だった時代に,朝7時から夜11時まで買い物ができるという「便利さ」を売ってきました。それが24時間化によってさらに時間的便利さを加えていきます。
つぎに商品も「便利さ」が売り物でした。お弁当や総菜といったすぐに食べることができる「便利な」商材を多数扱いました。導入された当時は否定的な意見が多かったおにぎりやおでんも,確かに味もそうでしょうが「便利である」ことが大きな価値でした。ビールも主流だった重たい瓶ビールを,不便なケース買いする方法から,軽いアルミ缶ビールを便利な一本単位で販売する方法に変えていった,その先導的な役割を果たしたのもコンビニです。
その後もコピー,情報端末,ATMなどなど。とにかく便利さをキーコンセプトとして,コンビニエンスストアは成長を続けてきました。その店舗数の多さも手伝って,現在では社会的インフラの一部として活用されるようになってきています(もちろんその弊害として,以前も取り上げた治安悪化の一因ともいわれますが)
その便利さを支えてきたのが,いわゆる定価販売であったことは間違いありません。日本人はサービスに対してお金を払うという意識がまだまだ高くありませんが,ATMの時間外定数料をみてもわかるように,自分のお金を引き出すのであっても,その「便利さ」にはお金が必要となります。最近は口座を維持するのにも手数料がかかる場合があります。ちょっと納得いかない気もしますが,やはり家においておくより安心ですし,いつでもお金を引き出せる「便利さ」を考えれば支払うべきコストなのかもしれません。
話がずれましたが,先に挙げたコンビニの「便利さ」の手数料とも言えるのが定価販売であったように思います。便利さ(つまり24時間営業であったり,便利な商品を開発することであったり)には,当然コストがかかります。そのコストを吸収するはずの価格が崩れるとなると,コンビニの強みである「便利さ」の強化は難しくなるように思います。
そうなると待っているのが,お決まりの価格競争。それもそれを得意とするスーパーマーケットたちとの戦いです。もともと低コスト競争を前提としていないビジネスモデルであるコンビニが,果たして彼らと互角の戦いができるのでしょうか? これがコンビニ業態が衰退していくのではないかという危惧の,一つの理由です。
明日に続く
【産経新聞: セブンに公取委が排除命令 値引き制限を「不当」と認定】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090622/biz0906221553005-n1.htm
これはコンビニ業界にとって大きな変化を促す,重大な意味を持っていると考えます。
確かに多くのコンビニエンスストアはフランチャイズ契約です。つまり同じ看板を掲げていても,各店舗は資本的には独立した存在です。ですから直営店であるジャスコやダイエーのように,すべての店舗で価格を本部が統制することは許されないのが原則です。
ただその一方で,全国のお店をチェーンストアとして効率的に機能させ,規模の経済性を得るためには,ある程度の統制が必要です。そこですべての加盟店は,フランチャイズ契約の遵守が求められます。その狭間で生じたのが,今回の値引き制限問題です。
おそらく今回の命令により,過剰在庫(仕入れすぎた)商品を値引きして販売するお店が増えてくることが予想されますが,これはコンビニ業界全体を揺るがす事態に発展するのではと私は危惧します。極論すれば,コンビニという業態がなくなってしまう引き金にもなるのではとすら思っています。
コンビニが提供している価値は,その名が示す通り「便利さ」です。最初は長時間営業。多くのお店が朝10時から夕方までの営業だった時代に,朝7時から夜11時まで買い物ができるという「便利さ」を売ってきました。それが24時間化によってさらに時間的便利さを加えていきます。
つぎに商品も「便利さ」が売り物でした。お弁当や総菜といったすぐに食べることができる「便利な」商材を多数扱いました。導入された当時は否定的な意見が多かったおにぎりやおでんも,確かに味もそうでしょうが「便利である」ことが大きな価値でした。ビールも主流だった重たい瓶ビールを,不便なケース買いする方法から,軽いアルミ缶ビールを便利な一本単位で販売する方法に変えていった,その先導的な役割を果たしたのもコンビニです。
その後もコピー,情報端末,ATMなどなど。とにかく便利さをキーコンセプトとして,コンビニエンスストアは成長を続けてきました。その店舗数の多さも手伝って,現在では社会的インフラの一部として活用されるようになってきています(もちろんその弊害として,以前も取り上げた治安悪化の一因ともいわれますが)
その便利さを支えてきたのが,いわゆる定価販売であったことは間違いありません。日本人はサービスに対してお金を払うという意識がまだまだ高くありませんが,ATMの時間外定数料をみてもわかるように,自分のお金を引き出すのであっても,その「便利さ」にはお金が必要となります。最近は口座を維持するのにも手数料がかかる場合があります。ちょっと納得いかない気もしますが,やはり家においておくより安心ですし,いつでもお金を引き出せる「便利さ」を考えれば支払うべきコストなのかもしれません。
話がずれましたが,先に挙げたコンビニの「便利さ」の手数料とも言えるのが定価販売であったように思います。便利さ(つまり24時間営業であったり,便利な商品を開発することであったり)には,当然コストがかかります。そのコストを吸収するはずの価格が崩れるとなると,コンビニの強みである「便利さ」の強化は難しくなるように思います。
そうなると待っているのが,お決まりの価格競争。それもそれを得意とするスーパーマーケットたちとの戦いです。もともと低コスト競争を前提としていないビジネスモデルであるコンビニが,果たして彼らと互角の戦いができるのでしょうか? これがコンビニ業態が衰退していくのではないかという危惧の,一つの理由です。
明日に続く
鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」セブン-イレブン式脱常識の仕事術
- 作者: 勝見 明
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2005/01/21
- メディア: 単行本
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