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政治とマーケティング [マーケティング]

民主党の小沢代表が辞任し,代表選挙が行われます。この間の民主党の動きを見ていて,この党はマーケティングの感覚を持った人はいないのだろうか,もったいないなあとつくづく思ってしまいました。

まず,せっかくのプロモーション期間を自分たちで短縮していることです。
企業に例えると,傷ついた自社ブランドイメージを回復させるための千載一遇のプロモーションチャンスが,今回の代表戦です。その善し悪しはともかく,ライバルの自民党はここ2回,全国規模でのキャンペーンツアーを展開し,そのたびに2人の総裁の突然の辞任という傷ついたブランドイメージをなんとなくチャラにしてきています。

民主党も同じようにやればよいのに,「色々な」理由から短期決戦。それもコアな顧客である党員やサポーター投票もしない限定的な選挙です。普段ならマスコミもほとんど取り上げない野党の党首選挙ですが,今回は自らが大キャンペーンをやって引きずりおろした小沢氏の後継者争い。政権交代の可能性もあって必ず報道してくれるのにもったいない話です。広告代理店に頼めば数十億円かかってもおかしくないようなプロモーションがフイになってしまいました。

もう一つは,キャンペーンのやり方です。とくに一貫性のなさ。
さすがに「内向き」だけでは問題だと思ったのか,急遽候補者同士の国民向けのディベートが企画されましたがこれもなんだか不思議。先ほど述べたように,国民それもコア顧客である党員・サポーターにすら投票権がないのに,その人たちに対して何をプロモーションしているのでしょう。例えるなら学校の生徒会長を選ぶのに,町中で街頭演説をしているような感じです。

このように書くと,次の民主党党首は総理大臣の可能性もあるのだから,国民に向けてメッセージを発信するのは当たり前という声も出てきそうですが,ならば党首選挙のやり方もそうすべきです。このやり方にすると決めたのなら,時間的制約のあるメディアの前でのセレモニー的な討論ではなく,投票日までそれこそ徹夜で民主党本部で議論し続ければいいこと。なにか中途半端な印象を受けます。やらないよりやった方がまし,よく言われる話は間違いで,一貫性のない「とりあえず」は多くの場合マイナスにしかなりません。

私は,政治の世界にももっとマーケティングを持ち込むべきだと考えます。これもこのように書くと,批判が飛んできそうです。実際に関西でよく見かけるがなり立て系の某コメンテーターは,選挙プランナーという仕事の特集のときに,「こんなもんに頼っているから政治はあかんのや。政治家っちゅうもんは自分の信念でやるもんや」と批判していました。

また私も何人かの政治家と実際に話をして,政治とマーケティングについて議論したことがあるのですが,ほとんどの人がこのコメンテーターと同じような反応でした。そして最後には「政治というのは色々な要素があるからね。マーケティングのようにはいかないのよ」と語ります。よくも悪くも「青臭い」タイプの政治家が多い民主党は,ひょっとしたらこのような意見の方が多いのかもしれません

ただこれは,一般社会にも多く見られるマーケティングに対する誤解の1つではないかと思います。どうもマーケティングは「顧客の顔色を伺って媚びるている」「自分たちがやるべきことを調査で見つけている」,というイメージを持たれてしまいます。色々な調査をやって顧客ニーズを探り,それにあった商品を提供することを意地悪な味方をするとこうなるのでしょう。とくに技術志向の強い企業の人は,ときどきこのような皮肉を言われます。
「メーカーとは,自分の信念で世の中に役立つもの,自分たちが作りたいものを作るのが仕事だ。そもそもマーケティングをやって客に媚びても,それがお客のためになるかどうかわからないし,それ以前に多くの客は自分の欲しい物がわかっていないのだから,調査をしてもわかるわけがない」

先ほどの政治家たちと同じです。しかしマーケティングの本質はそうではありません。マーケティングは自分のやりたいことを実現するために他者(とくに顧客)との接点を探る活動だと私は考えます。ですから自分の信念ややりたいことがない人には,マーケティングなどできはしないのです。

例えばアメリカ大統領選挙。やややり過ぎの面がありますが,オバマさんの演説にしても自分の言いたいことがちゃんとあった上で,どのようなたとえ話,どのような表現を使えばもっとも聴衆に受け入れられやすいのか,演説の効果を最大化できるのかが徹底的に練り上げられていると言われています。ただ自分の信念を思いつくままにしゃべっているわけではありません。



派手な広告宣伝や調査というのは,マーケティングを実行するための戦術の1つであり,マーケティングそのものではありません。マーケティングの本質は,自分のやりたいことと世の中のニーズのズレを調整し,自分の信念をわかりやすく,効果的に相手に伝えること。それは製品開発はもちろんのこと,政治にも,そして自分の人生にも求められる大切な「考え方」であり「スキル」だと思います。

なんか職場でうまくいかないなあと感じている方。ぜひマーケティング的発想を(なんだかタイトルから話がずれましたね)。



ドクター・オガワに会いにいこう。―はじめてのマーケティング

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  • 作者: 小川 進
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