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医師不足対策の盲点: 感情を読む難しさ [マーケティング]

今月は1日さぼってしまったので,土曜日ですけど更新です。

朝ニュースを見ていたら,地方での医師不足について,大変興味深い問題を紹介していました。

すでに皆さんご存知の通り,医師不足が深刻になっています。救急患者のたらい回し,産婦人科の閉鎖など,日本の医療はどうなってしまうのかと心配になる問題が次々に起きています。とくに地方では医師不足が深刻で,大都市からの医師派遣が重要であるという議論も多くみられます。

ニュースは,まさに都市部から地方へ派遣された医師が抱える問題でした。派遣された医師の方が困って問題,それは言葉が通じないことだそうです。ニュースで取り上げていたのは確か青森だったの思うですが,そこのお年寄りが話している言葉がよくわからず,細かな症状が伝わらないのだそうです。

確かに,病院で症状を伝えるときに使う言葉は,必ずしも専門的な表現ではありません。おなかが痛いときも,「疝痛です」「鈍痛です」といのではなく,「キリキリ痛む感じです」「なんとなくドヨーンとした感じのい重たい感じです」といった曖昧な表現になりがちです。お医者さんはそのニュアンスをくみ取り,病気に対する仮説を立てていくわけです。その症状を伝える表現が方言であった場合,お医者さんはお手上げになってしまうのです。

外国語を勉強されている方はよくわかると思うのですが,気持ちを伝えることは大変難しいものです。例えば,ビジネスの現場で取引相手にはじめて会うときも,会いたくて仕方なかった芸能人と話すチャンスができたときにも,「I am glad to meet you.」(お会いできてうれしいです)と言っておけばOKです。しかし,いわゆるお愛想で言う場合と,興奮して言う場合とは微妙に表現が違って当たり前です。日本人だとveryをつけて「とても」という感情を表現することが一般的ですが,ネイティブは必ずしもそうではないそうです。日本語も同じですが,シチューションによって変わっていくわけです(友達なら「めっちゃ」でもよいでしょうが,年上の人だと「大変」「とても」と変わります)。 このニュアンスを使い分けること,聞き分けること,理解することは大変時間のかかることです。お医者さんは大変だと思います。

ビジネスの世界で同じです。消費者は自分たちのニーズを,メーカーが使うような専門的な言葉で表現することはできません。大阪の人でしたら「このあたりがブワーとなって,ほんであっちがグチャっとなったような感じやね」となるわけです。マーケティングの現場では,しばしばこの「ブワー」や「グチャ」を「大きく花が開いたような」や「形態が留まらないような」という一般的な言葉でまとめがちですが,これでは微妙なニュアンスが打ち消されてしまう恐れがあります。

「ブワー」をブワーとして,「グチャ」をグチャとしてどうとらえていくか。大変難しい問題ですが,取り組まなくてはいけません。

じつは経営学の世界では,すでに「情報の粘着性」や「ユーザー・イノベーション」という概念で議論がされています。機会をみて紹介してきたいと思います。

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