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阪急百貨店と阪神百貨店が合併へ [ビジネス一般]

ついこの前,持ち株会社方式で経営統合した阪急百貨店と阪神百貨店ですが,完全に統合する方向で準備が進められるそうです。
【読売新聞】 http://osaka.yomiuri.co.jp/eco_news/20080327ke06.htm

もともと村上ファンドに狙われた阪神電鉄を阪急電鉄が救済する,という流れの中から始まった経営統合でした。そのため当初から,いずれは阪急主導で完全統合が進むと言われていました。実際,存続会社は阪急百貨店になるようですから,阪神百貨店側にとっては厳しい状況が待っていると予想できます。
昔から経営統合は,「対等」はあり得ないと言われています。片方がもう片方をコントロールすることができなければ,1つの企業体になることは難しく,結局は合併効果を得ることなく,むしろ負の効果ばかりを生み出してしまうというものです。

あえて名前は出しませんが,対等合併を謳っていたはずの銀行同士の経営統合では,お公家さんとも揶揄された片方の銀行が,野武士のごときパワーを持つもう片方の銀行に完全に押さえ込まれ,最終的には主要ポストから完全にパージされたとも言われています。良い悪いではなく,そのぐらいしないと合併した意味は薄いのでしょう。

しかし今回の百貨店のように,お店ごとに個性がある企業の場合はそう簡単ではありません。庶民的なイカ焼きが名物である阪神百貨店と,高いファッション性や店格を持つ阪急百貨店を1つにすることは,おそらくあり得ないでしょう。その点はすでに経営陣もわかっているため,お店の名前はそのまま残す方向だそうです。

ただ,私はもうひとつ問題点があると考えます。それはヒトです。経営統合する以上,人事交流は不可欠だと思うのですが,そうなると背負ってきた文化が違う人が,別のお店を担当することになるわけです。小売業はヒトの要素が大きく,接客で出る言葉の端々,店員の立ち振る舞いの中に,そのお店を形成する色々な要素が含まれているわけです。これが薄まることは,お店の独自色ということを考えたとき不安材料と言えるのではないでしょうか。

そしてもうひとつ問題があります。それは,そのような人事交流の中で嫌気がさした従業員が抜けていくことです。先に触れたように,小売業はヒトが非常に大切なビジネスです。接客のみならず,仕入れやディスプレイなど,必要なノウハウは人に帰属しますし,店員の士気は接客や店作りに直接反映してきます。現場をまとめるリーダーが抜けてしまった場合,そのお店はがたがたになります。

私が知っている範囲でも,そのような現象が起きています。ある企業の子会社であった食品スーパーが,ある小売企業に売却されました。その企業は食品スーパー業態をすでに所有しているので,業界の素人ではありませんでした。しかし,ビジネススタイルが大きく異なっていたこと,そして食品スーパー同士の比較ならば買収された企業の方が上であったにも関わらず,力関係上,川下に立つことを強いられたため,多数の幹部従業員が辞めてしまったそうです。

その結果,買収された企業のお店は大きく荒れてきました。とくに細かな心配りが必要な店頭管理のレベルが低下し,商品補充や整頓,動線管理などが急激に悪化していったそうです。

経営統合では資本の論理ばかりが議論の俎上に上りますが,実際はそのような細かなところまで十分目配りをしなくては,決してうまくいくものではありません。ヒットした映画の名場面ではないですが,事件は現場で起きているのです。経営企画スタッフが描いたシミュレーションだけでは回っていきません。
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