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教育産業の難しさ [大学マーケティング・シリーズ]

教育で営利。そう言うとコムスン問題のように,目くじらを立てて怒り出しそうな人がいるかもしれませんが,教育「サービス」もビジネス。非営利にすることはできません。国立大学まで独立採算制が厳しく問われている昨今,私立大学ともなれば営利を考えないわけにはいきません。利益は次の投資の源泉にもなり,新しいサービスを提供する原資になります。

利益を追求しようとすると,効率性が重視されます。この効率性を得るためには,規模を拡大する(規模の経済性),持っている能力をフル活用する(範囲の経済性)など,様々な方法があります。例えば最近の企業は,リストラ効果で莫大な利益を上げています。簡単に言うと,同じ仕事量を少ない人数で行うということ。人減らしです。

これを教育産業にあてはめると,生徒を集めるだけ集めて,教員数は増やさないという手法です。しかし教育産業ではそれはあまり許される行為ではありません。最近問題となっているNOVA問題(http://www.asahi.com/business/update/0616/TKY200706160162.html)でも,この手法を導入したが故に肝心のサービスがうけることができず,顧客に重大な損害を与えているわけです。

それならばと,近年は大学の資産をいろいろな形で使い回すという範囲の経済性で利益を出そうとしています。例えば社会人教育。普段は学生にしか教育サービスを提供していない教員や大学設備を,社会人向け教育に使おうというものです。他にも産学連携という名のもとにおこなわれる共同研究事業,早稲田大学のようにホテル事業にまで手を伸ばしているところもあります。

ただこれもクセモノ。大学教員も人間ですから,あまりにも使い回されると1サービスあたりのグレードは落ちてしまいます。大学の授業など楽なものだろうと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが,毎日大勢の人の前で話をするということは,想像以上に気力と体力を消費します。

また以前にもお話しましたが,大学教員の仕事は教育だけではありません。通常は教育,研究,学務(大学の事務仕事)の3つから構成されています。じつは私は今日も朝から大学に出て仕事をしていますが,4月から休日らしい休日はほとんどありません。平日も朝の7時から夜は10時ぐらいまで毎日働いていますし,私たち経営学者は研究室の中だけでなく,あちこちを飛び回っています。結構働いてるのです(まあ働いていない人も決して少なくはないのですが)。

愚痴はともかく,このように教育産業はなかなか利益を生み出しにくい構造になっています。しかしこれからの時代,大学経営も利益と投資(財テクという意味ではないですよ)。これを本気で考えていく必要があると思います。


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