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ネットと雑誌の連動は可能か [ビジネスモデル]

雑誌や新聞が売れていません。その原因の一つとしてあげられているのがネットの存在。わざわざ雑誌や新聞を買わなくても,ネットで事足りてしまうことが業界不況の原因だと言われています。

そのような中,講談社が昨年末に休刊した「月刊現代」の後継雑誌として,ネットとの連動を売りものとした「G2」を創刊させます。

【MSN産経:講談社が月刊誌「G2」創刊へ ネットと連動】
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/090617/bks0906171753000-n1.htm

しかし雑誌とネットの「連動」は果たして可能なのでしょうか。私は懐疑的です。先にも述べましたが,ネットでできることは雑誌という紙媒体を使う必要など基本的にないからです。代替ならともかく「連動」させる理由は,少なくともユーザー視点から考えるとありません。メーカー(出版社)の事情です。

それでは雑誌「でしか」提供できない価値と何でしょうか。1つはネットにアクセスできない層への情報提供。これはどんどん減っていくでしょう。次は分析・検証。ネットは速報性に強さを発揮しますが,その提供スタイルは基本的にコンパクトで,短時間で消費される情報が主体となっています。ある事実に対する深い分析や,後日談などの後追い情報などは弱かったりします。他にも情報の検索性や一覧性も,じつはネットより紙媒体の方が優れている部分があったります

「マーケティング近視眼」という非常に有名なマーケティングの論文があります。ハーバード・ビジネススクールのセオドア・レビット教授が40年以上も前に書いた論文ですが,その内容は今でもビジネスの世界に影響を与えています。彼はこの論文の中で,アメリカの鉄道会社がなぜ衰退したかについて,彼らが自分たちを「鉄道サービスを提供する会社」と定義したことに衰退理由があると,分析しています。そして鉄道会社は顧客に対して「鉄道」という製品を提供していたのではなく,「移動すること」を提供していたのであり,鉄道はその手段の1つに過ぎなかっただったのに,彼らはその製品に拘泥し,自動車や飛行機といった移動手段の変化についていこうとしなかったと断じています。


T.レビット マーケティング論

T.レビット マーケティング論

  • 作者: セオドア・レビット
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2007/11/02
  • メディア: 単行本



雑誌や新聞の現状は,まさにレビットが指摘したアメリカの鉄道会社の状況と非常に似ているのではないかと考えます。顧客は自分たちの「何」に対してお金を払ってくれていて,その「何=価値」を提供するための,もっとも的確なツールは何であるのか。果たして紙媒体なのか,それともネットなのか。

そう考えると今回の講談社の事例は,ネットと雑誌の「連動」は,何が何でも「鉄道」という道具を残したがっているだけのように思えてしまいます。
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