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ソニーがソニーでなくなる日 [ビジネス一般]

先週の金曜日,ソニーが新体制を発表しました。
【日経ITプラス ソニー、ストリンガー会長の社長兼務を発表 「成長戦略は若手に」】
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITac000027022009&landing=Next

エレクトロニクス部門を統括していた中鉢社長は,業績不振の責任をとって事実上更迭され,ストリンガー会長が社長を兼務することになりました。そして,改革を担う人材として若手を抜擢。40代が中心となって成長戦略を描く布陣となりました。

果たしてこれで,ソニーは復活できるのでしょうか? インタビュー記事にもあるように,同社は選択と集中を進めて高利益の事業に特化。その利益を原動力に新しいイノベーションを起こしていく方針のようですが,それが果たして「ソニー」なのでしょうか。


ソニーは甦るか

ソニーは甦るか

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2009/01
  • メディア: 単行本



確かに,ストリンガーの言っていることは現代経営学の基本中の基本です。模範解答でしょう。しかし,その一方で古典的な経営学で常々言われている「ビジョン」と「ドメイン」の視点から考えたとき,個人的にはソニーの復活には疑問符をつけたくなります。

非常に有名な,ソニーの前身である東京通信工業の設立趣意書(創業理念)です。
【東京通信工業株式会社 設立趣意書】http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/prospectus.html

お時間があれば,是非全文を読んでいただきたいのですが,大切なところは次の2つだと思います。

まずは,会社設立の目的の第一です。

「真面目ナル技術者ノ技能ヲ、最高度ニ発揮セシムベキ自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」

要するに技術屋さんが,自分の能力を最大限に発揮できる楽しい研究ラボ,工場を造るのだと一番に宣言しているのです。ちょっと意地悪な見方をすると,売れるものを我慢して作るのではなく,売れるかどうかわからないが,自分たちが作りたい商品を作ることがまず最初だよという,いわゆるプロダクトアウトの発想が明言されているわけです。

しかし,それでは会社として成り立ちません。そこで出てくるのが経営方針です。そこにはこんなことが記されています。
「不当ナル儲ケ主義ヲ廃シ、飽迄内容ノ充実、実質的ナ活動ニ重点ヲ置キ、徒ラニ規模ノ大ヲ追ハズ」
「経営規模トシテハ寧ロ小ナルヲ望ミ大経営企業ノ大経営ナルガ為ニ、進ミ得ザル分野ニ技術ノ進路ト経営活動ヲ期スル 」

つまり,やりたいことをやるのであれば,いたずらに規模を大きくすることを望んではならない。むしろ小さいことを武器として大きな企業ができないような技術分野を攻めていきましょう,と言っているのです。


ソニー自叙伝 (ワック文庫)

ソニー自叙伝 (ワック文庫)

  • 作者: ソニー広報部
  • 出版社/メーカー: ワック
  • 発売日: 2001/06
  • メディア: 新書



小さくてもキラリと光る企業。まさにニッチ企業として,技術者の理想郷になろうというのがソニーのビジョンであり,ドメインであったわけです。実際,ソニーはその理念のもと,ユニークな商品を作ってきました。1年ほど前までは,私はその商品に心動かされた「ソニーフリーク」の一人「でした」。


さてもう一度,ストリンガーの話を思い起こしてください。

普通の大企業としてのソニー。ムダを徹底的に排除し,スリム化を進めるソニー。それは他の企業に比べて魅力あるAV機器,ゲーム機器メーカーとなり得るのでしょうか。ソニーがソニーでなくなる日。その日が近づいてきたような気がします。


ソニーをダメにした「普通」という病

ソニーをダメにした「普通」という病

  • 作者: 横田 宏信
  • 出版社/メーカー: ゴマブックス
  • 発売日: 2008/02/01
  • メディア: 単行本



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