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トヨタ リコール問題(2) [ビジネスモデル]

昨日に引き続き,トヨタのリコール問題です。

日本のみならず、世界のナンバーワン自動車メーカーになったトヨタが、なぜあのような対応しかできなかったのでしょうか。私の研究テーマである事業の仕組みという観点から仮説を考えてみました。それが,

ミスを出さないことが前提の事業の仕組みとミスを出すことを前提とした事業の仕組み

の違いなのではないかと。

ご存じの通り,トヨタの品質管理は世界に冠たるものであると言われています。コストダウンばかりが指摘されますが,高い品質を生み出すために徹底してミスを起こさないための事業の仕組みを生み出しています(ミスというのはイコールコストアップです。ミスが減ればコストダウンになります)。

ただこの事業の仕組みはミスが発生したときに大混乱を起こす可能性があります。なぜなら経営活動のすべてのベクトルがミスを「起こさない」方向に向かうわけですから,ミスが「起きる」ことなど考えいないわけです。万全のセキュリティシステムを構築している美術館が,一旦破られてしまうとその後は泥棒に対して完全に無力なのと似ているかもしれません。起きないはずのものが起きているわけですから,何をどうしてよいかわからないわけです。

日本の企業は比較的,この前提を持った事業の仕組み,文化が多いように思います。社内会議などでもそうでしょうが,失敗したときのこと,目標が未達の時の備えについてあらかじめ指摘すると「なんだ?お前はやる前から失敗する気でいるのか」と叱られてしまいます。

それに日本人は比較的きっちりしていますから,ルーチンワークと言いますか,決められた手順をしっかり守ってミスを防ぐという習慣があります。製造業では作業手順,サービス業ではマニュアルの遵守です。その結果,手順から外れる出来事が起きると逆に回復に時間がかかります。典型例は鉄道。日本の鉄道運行は世界一正確ですが,一方で何かトラブルが発生すると復旧に途方もない時間がかかることもしばしばです。原因特定ができないのです。

一方,欧米企業は比較的ミスが発生することを織り込んだ事業の仕組みを構築しているように感じます。決して彼らがいい加減という意味ではありません(日本人からすれば...ですが)。人間ですからミスは起きるものだと考えているので,その対応も早いことが多いです。

以前もお話ししましたが,ダイソンの掃除機の事例がまさにそれでした。我が家で使っているダイソンのモーターがダウンしたことがあります。買ってからそんなにたっていないので,やっぱり外国ものはダメだなあと怒り半分,あきらめ半分でサービスセンターに電話をしました。

すると製品番号と保証書番号を聞かれ,「すぐに業者に取りに行かせます。お客様はホースだけ外しておいて下さい。箱もこちらで手配します」とのこと。翌日にはメーカー指定の宅配業者の方が到着。私は本体を渡すだけです。しかし修理ですから,こりゃあ下手すると1ヶ月ぐらい待つのでは?と思っていたら,なんと中2日で戻ってきたではないですか。もちろんちゃんと動いています。

あまりの素早さに驚き,サービスセンターに再び電話。状況を聞くとこれまた驚く回答。

「お客様の製品で発生した現象は,これまでに報告例がありません。ですから原因究明をしてから修理すると相当な時間,お客様にご不便をおかけすると思いましたので,モーターを新品に取り替えご返送しました。何か不都合な点はありましたでしょうか」

とのこと。もちろん不都合などありません。さらに聞けば,取り替えたモーターはこれから検査して原因究明をします。この結果についてはお伝えできないと思いますが,ご了承下さいとのこと。

驚きました。これ以来,私はダイソンの大ファンです。日本のものに比べるとかなりお高いですが,その価値は十分あります。

もちろんこの裏には,保険を整備していたり,修理ができたモーターを別の形で使う(私のモーターもじつは再生品かもしれません)などしっかりとした事業の仕組みがあるはずです。つまり壊れることもあるという前提に立っているので,その準備ができていたわけです。

トヨタの場合,必要以上に規模を拡大してきましたから,リコールに伴う損失も大きくなることを恐れたのかもしれません。しかしミスは起きるもの。それをどうリカバーするのか。これも大事なテーマだと思います。


逆風野郎 ダイソン成功物語

逆風野郎 ダイソン成功物語

  • 作者: ジェームズ・ダイソン
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2004/05/27
  • メディア: 単行本



トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして

  • 作者: 大野 耐一
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 1978/05
  • メディア: 単行本



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売れ残りと売り逃し [ビジネスモデル]

好調が続くユニクロですが、1月の売上高は前年同月比7.2%減だそうです。ついにユニクロまでも失速か?と思いきや,理由は「売れすぎ」だそうです。

【朝日新聞:ユニクロ売上高、1月は7.2%減 冬物の在庫薄が響く】
http://www.asahi.com/business/update/0202/TKY201002020306.html

要するにヒートテックなどの売れ筋冬物商品が12月までに売れすぎ,1月は売るものがなくなってしまったということ。うらやましい話なのかもしれませんが,やはり売り逃しというのは由々しき問題です。

このご時世なので,在庫という目に見える損失ばかりに注意が向いがちで,あれば売れたはずの損,つまり売り逃しという「目に見えない」損失にはどうしても無頓着になってしまいます。

売り逃しはその時得られるはずの売上げを失っただけではなく,その店にお客さんがもう足を運ばなくなるかもしれないというリスクも伴います。「どうせ欲しいサイズは売り切れだろ」という気持ちを持たれてしまうからです。実際私もユニクロのある店舗に関しては,いつ言っても欲しいサイズがないので,あるときからぱったりと行かなくなりました。

セブンイレブンが高業績であった1つの理由として,この売り逃しロスの削減が指摘されていました。



売り逃しの危険性をあまり甘く見てはいけません。


競争的共創論―革新参加社会の到来 (HAKUTO Management)

競争的共創論―革新参加社会の到来 (HAKUTO Management)

  • 作者: 小川 進
  • 出版社/メーカー: 白桃書房
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 単行本



小売業の業態革新 (シリーズ流通体系)

小売業の業態革新 (シリーズ流通体系)

  • 作者: 石井 淳蔵
  • 出版社/メーカー: 中央経済社
  • 発売日: 2009/07
  • メディア: 単行本


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農業ビジネス 一杯のちゃんぽん [ビジネスモデル]

外食チェーンのリンガーハットが,10月1日よりグループ全店で用いる野菜をすべて国産野菜に切り替えることを宣言したそうです。

【nikkei TRENDYnet:一杯のちゃんぽんに野菜480g、外食チェーン初の野菜国産化計画とは?】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20091006-00000003-trendy-ind

記者はステレオタイプ的に,消費者の安全・安心志向の高まりと書いていますが,記事を読めばわかるとおり,別に経営者は安全・安心という視点ではなく,単純に鮮度がよくておいしいから国産を選んだようです。

確かに輸入野菜=危険,国産=安全というのは明らかに間違いで,海外の野菜の方が安全性が高い場合も少なくないと思います。デンマークの野菜は,本当においしいですからね。「余計な」ことをしていないので,形は悪いですし,店頭に並ぶときも泥まみれ。自宅で調理する前には,日本の野菜よりも相当な「仕事」が必要になりますが,とにかく味が濃い。これは肉類にも言えるのですが,変な臭みとかがなく味がしっかりしています。そして身も固いので,煮込んでも崩れるようなことがほとんどありません。

ただ鮮度という面では,国産が勝つのは当然のこと。農業ビジネスでは安全・安心ばかりがクローズアップされますが,今一度鮮度へのこだわりも考えるべきかもしれません。今は食品スーパーを中心とした小売業者がその鮮度管理を担っていますが,外食などへ販路を拡大する場合,農業事業者もしくは中間流通がこの鮮度を担保するという事業の仕組みも考えなくてはなりません。


小売業の業態革新 (シリーズ流通体系)

小売業の業態革新 (シリーズ流通体系)

  • 作者: 石井 淳蔵
  • 出版社/メーカー: 中央経済社
  • 発売日: 2009/07
  • メディア: 単行本



ディマンド・チェーン経営―流通業の新ビジネスモデル

ディマンド・チェーン経営―流通業の新ビジネスモデル

  • 作者: 小川 進
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 単行本






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金属バットを買った人はこんなものも買っています [ビジネスモデル]

あるサイト経由で,興味深いブログの記事を見つけました。

【金属バットを買った人はこんな商品も買っています(ドイツAmazon)】
http://developer.cybozu.co.jp/akky/2009/09/post-6b2a.html

ご存じのように,多くのネット通販では自分の購入履歴や検索記録に連動して,関連した商品が推薦されます。どういう法則でやっているのかは知りませんが,中には「なんでこの商品でこれが推薦されるの?」というものも時々出てきます。

そのプロモーションの1つのが,自分が興味をもった商品を買っている人は,他にどんなものを買っているかというこの方法は,結構おもしろいのですが,これは…。

こういうこともわかってしまうのですね。何もなかったことを祈ります。


アマゾンの秘密──世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか

アマゾンの秘密──世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか

  • 作者: 松本 晃一
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2005/01/28
  • メディア: 単行本



アマゾン・ドット・コムの光と影

アマゾン・ドット・コムの光と影

  • 作者: 横田増生
  • 出版社/メーカー: 情報センター出版局
  • 発売日: 2005/04/19
  • メディア: 単行本



となりの「ネット通販」が儲かっている本当の理由

となりの「ネット通販」が儲かっている本当の理由

  • 作者: 平本 隆之
  • 出版社/メーカー: ぱる出版
  • 発売日: 2009/08
  • メディア: 単行本



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ローソンとマツキヨが提携 [ビジネスモデル]

コンビニ業界が大きく動いています。

業界第2位のローソンと,ドラッグストア最大手のマツモトキヨシが業務提携で合意です。

【産経新聞:ローソン、マツモトキヨシが共同出資会社 来年3月にも店舗展開】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090824/biz0908241122010-n1.htm

コンビニエンスストア2位のローソンとドラッグストア最大手のマツモトキヨシホールディングスは24日、業務提携することで基本合意したと発表した。年内に共同出資会社を設立し、食品や医薬品を取り扱う新業態の融合店舗を早ければ平成22年3月にも共同展開していく。  今年6月に薬剤師がいなくても新資格の「登録販売者」を配置すれば、大半の一般医薬品(大衆薬)を販売できる改正薬事法が施行された。こうした医薬品販売の規制緩和をうけて、薬品を新たな収益源としたいローソンと、異業種との提携を通じて業務を拡大したいマツモトキヨシの思惑が一致した。(以上引用)

先日ローソンは,ampmの買収が頓挫してしまっていましたが,早速次の一手を売ってきました。ローソンは従来のコンビニのビジネスモデルから脱却し,いろいろな店舗フォーマットの開発に取り組んでいますが,これもその一環でしょう。記事にあるようなPB開発や物流網の共同運用だけでなく,規制緩和によってコンビニの重要な商材になりつつある医薬品販売にとってみても,大きなメリットとなるかもしれません。

さてローソンとのお見合いが破談になったampmですが,今度は大手商社との縁談が。

【読売新聞:商社主導のコンビニ再編 伊藤忠、am/pm買収交渉】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/enterprises/manda/20090821-OYT8T00304.htm

伊藤忠はファミリーマートやサークルKサンクスとも深い関係にあり,もしampmを買収することになると,巨大コンビニグループが誕生するかもしれません。

王者セブンイレブンが見切り販売を巡って加盟店や公取委とごたごたする中,競合企業は着々と包囲網を固めつつあります。

コンビニ業界を取り巻く経営環境は,大変厳しいものがあります。

【フジサンケイビジネスアイ:天候不順 凍えるコンビニ 7月売上高、過去最大7・5%減】
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200908210012a.nwc

安易に値引き競争に走ったツケが,来店客数が伸びずに売り上げだけを減らすという最悪の形で既存店を直撃しています。

世界屈指のエリート養成機関であるハーバード・ビジネススクールでも取り上げられた日本のコンビニ(セブンイレブン)。そのビジネス・モデルが大きく変わる時期にきているのかもしれません。


セブン‐イレブン覇者の奥義

セブン‐イレブン覇者の奥義

  • 作者: 田中 陽
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本



ビジュアル図解 コンビニのしくみ (DO BOOKS)

ビジュアル図解 コンビニのしくみ (DO BOOKS)

  • 作者: 笠井 清志
  • 出版社/メーカー: 同文舘出版
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 単行本



図解入門業界研究 最新コンビニ業界の動向とカラクリがよーくわかる本 (How‐nual Industry Trend Guide Book)

図解入門業界研究 最新コンビニ業界の動向とカラクリがよーくわかる本 (How‐nual Industry Trend Guide Book)

  • 作者: 根城 泰
  • 出版社/メーカー: 秀和システム
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 単行本



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関西独立リーグ問題 [ビジネスモデル]

やることがすべて裏目に出てしまっています。

女子高校生投手の加入で話題となった関西独立リーグ。しかし存続の危機に直面しています。

運営会社の無責任な撤退後、なんとか新体制で再スタートを切ったのですが、今度は人気球団「神戸9クルーズ」内部での対立。スポンサー獲得のために「営業活動」への協力を依頼する経営サイドに対して、野球選手として練習を優先させる方針からこの要請に非協力的であった現場サイドが対立。ついには監督の解任という事態にまで発展しました。

【産経関西:関西独立リーグ 神戸・中田監督を解任 方針対立、球団社長「苦渋の決断」】
http://www.sankei-kansai.com/2009/07/29/20090729-012838.php

これにより球団経営サイド主導で意思統一が図れたのかと思いきや,今度は肝心の営業活動の目玉である選手が“離脱”してしまいました。

【朝日新聞:ナックル姫・吉田えり投手休養へ 監督解任にショック】
http://www.asahi.com/sports/update/0730/OSK200907300062.html

監督解任については、どちらの言い分も正しいと思うので何とも言えないのですが,少なくとも運営会社の撤退後,彼らに明確なビジネスモデルがあったとは言い難く,遅かれ早かれこのような結果になるのは当然だったのかもしれません。

地域密着による生き残りと簡単に言いますが,実践することは容易ではありません。例えばモデルケースのように言われるJリーグですが,地元に密着はしていますがスポンサーなど資金面では必ずしも地元だけに「密着」しているわけではありません。全国規模で出資を募り,なんとかクラブ運営を可能にしています。また地元密着にしても,広く薄く協力を募る仕組みを各球団が整えているわけです。

さらにサッカーでは,経営基盤が弱いチームは,有望な若手選手を安い年俸で獲得して,それを鍛え上げて活躍させ,価値が高まったところで強豪球団に「売却」。その差額でまた有望選手を獲得するというビジネスモデルが一般化しています。強豪球団はカネで選手をかき集めると批判が集まりますが,少なくともサッカー業界全体ではうまく資金が回る「仕組み」ができています。

さて関西独立リーグですが,果たしてどのようなビジネスモデルでこのリーグを存続させようとするのか。その方針をしっかり立てないと,また同じような混乱が続き1年持たずに崩壊してしまうように思います。理念だけでは飯は食えないのですから。


実践スポーツビジネスマネジメント―劇的に収益力を高めるターンアラウンドモデル

実践スポーツビジネスマネジメント―劇的に収益力を高めるターンアラウンドモデル

  • 作者: 小寺 昇二
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2009/03/05
  • メディア: 単行本



トップスポーツビジネスの最前線2008――夢を実現させる仕事 (講談社BIZ)

トップスポーツビジネスの最前線2008――夢を実現させる仕事 (講談社BIZ)

  • 作者: 中村 好男 (編著)
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/09/25
  • メディア: 単行本



スポーツマーケティング (スポーツビジネス叢書)

スポーツマーケティング (スポーツビジネス叢書)

  • 作者: 原田 宗彦
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 2008/04
  • メディア: 単行本



史上最も成功したスポーツビジネス

史上最も成功したスポーツビジネス

  • 作者: 種子田 穣
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2002/08
  • メディア: 単行本



スポビズ・ガイドブック ’08-’09―スポーツを仕事にする!スポーツを学ぶ! (2008)

スポビズ・ガイドブック ’08-’09―スポーツを仕事にする!スポーツを学ぶ! (2008)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 単行本



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マイクロソフト減収 [ビジネスモデル]

先週、マイクロソフトが上場以来初の減収決算を発表しました。

【日経新聞:マイクロソフト減収…「OS依存」曲がり角】
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20090727-OYT8T00320.htm

パソコン市場の落ち込みによる基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・ビスタ」の販売不振が要因だ。業界ではソフトウエアの無料化や低価格化が広がっており、圧倒的なOS市場のシェア(市場占有率)を武器に高収益を稼ぎ出すMSの事業構造に転換を迫っているようだ。(以上引用)

確かに「パソコン市場の落ち込み」の要因もあるでしょうが,「ウィンドウズ・ビスタ」そのものの不振の影響も大きいでしょう。明らかにこの商品は失敗策であり、市場(顧客)から支持を得ることができませんでした。

圧倒的な市場シェアを背景に、近年のマイクロソフトの商品は顧客無視とも言えるようなバージョンアップを繰り返してきました。かつては新しい価値を提供するためのOSバージョンアップでしたが、不振のビスタは完全にバージョンアップそのものが目的化。それもマイクロソフトの事情でのバージョンアップと言わざるを得ないものでした。

本来ソフトを動かすための裏方に過ぎないOSが、バージョンアップするたびにハード(パソコンそのもの)の買い替えまで強いる。本末転倒のことが続いてきました。

じつは私もこのようなマイクロソフトのやり方に加え、アプリケーションソフト「Officeシリーズ」の度重なる無意味なバージョンアップと、その都度強いられるスイッチングコストの高さに嫌気が差し、ついにMacへの切り替えに動いた一人です。パソコンが売れていないと言いますが、じつはMacの販売は好調だという話も聞きます。この減収は顧客から示された「天罰」かもしれません。

その不振OS事業に強力なライバルが出現します。検索エンジンで高いシェアを誇るグーグルが、ついにOS分野にも進出します。それも有料・クローズド独自主義のマイクロソフトのビジネスモデルと正反対の、無料・オープンソースのリナックスベースでのOS開発です。マイクロソフトのこれまでのビジネスモデルを完全に破壊してしまう可能性を秘めています。

焦るマイクロソフトも、グーグルの主戦場であるネット広告事業を強化したり、ドル箱であるアプリケーションソフト「Officeシリーズ」の一部無料化を検討するなど、対抗手段を次々に打ち出しています。しかしこれはいつもこのブログで指摘している、ライバルへの対抗手段の行き先が、相手の得意とする土俵となってしまう危険性をはらんでいます。

有償と無償、クローズドとオープン。相容れないビジネスモデルを併存させようとするマイクロソフトに、果たして勝ち目はあるのでしょうか。


マイクロソフト ビル・ゲイツ不在の次の10年

マイクロソフト ビル・ゲイツ不在の次の10年

  • 作者: メアリー・ジョー フォリー
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 単行本



ザ・グーグルウェイ グーグルを成功へ導いた型破りな戦略

ザ・グーグルウェイ グーグルを成功へ導いた型破りな戦略

  • 作者: ベルナール・ジラール
  • 出版社/メーカー: ゴマブックス
  • 発売日: 2009/04/27
  • メディア: 単行本



グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する  文春新書 (501)

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)

  • 作者: 佐々木 俊尚
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 新書



ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?

ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?

  • 作者: ウィリアム パウンドストーン
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2003/06/15
  • メディア: 単行本





スティーブ・ジョブズの流儀

スティーブ・ジョブズの流儀

  • 作者: リーアンダー ケイニー
  • 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
  • 発売日: 2008/10/23
  • メディア: ハードカバー



スティーブ・ジョブズ 成功を導く言葉 (青春新書INTELLIGENCE)

スティーブ・ジョブズ 成功を導く言葉 (青春新書INTELLIGENCE)

  • 作者: 林 信行
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2009/06/11
  • メディア: 新書



IT帝国の興亡 スティーブ・ジョブズ革命

IT帝国の興亡 スティーブ・ジョブズ革命

  • 作者: 村山 恵一
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2009/07/17
  • メディア: 単行本



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ユニクロが百貨店進出 [ビジネスモデル]

ついにこのような日がやってきました。

【産経ニュース:ユニクロ 相次ぎ百貨店へ出店 まず今秋、西武に】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090724/biz0907241130012-n1.htm

衣料品専門店チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、大手百貨店に相次いで出店する。今秋をめどにセブン&アイ・ホールディングス傘下の西武百貨店に出店するほか、高島屋とも最終調整に入った。都心部の大型店展開を目指すファーストリと、販売不振の衣料品をテコ入れしたい百貨店側の思惑が一致した。(以上引用)

ユニクロが出店要請に応じることは当然でしょう。百貨店は超一等地に立地しているわけですから、そこに店舗を構えることができるなど願ってもないことです。

しかし出店を要請する百貨店。いかがなものでしょう。流通の教科書には、百貨店の存在意義の一つとして「非日常性」が挙げられています。いわゆるハレの日のための商品を提供する場所が百貨店であると長らく考えられてきました。

ユニクロの服。果たしてハレの日でしょうか。確かにユニクロの服は高品質で低価格。非常に魅力的です。しかし今やどこでも買うことができる日常品です。それを集客の武器にせざるを得ないところに百貨店の苦悩が現れています。

コンセプトは時代とともに変化していきます。しかしコンビニの値引き販売のところでも散々書きましたが、コンセプトを変えた行き先が強力なライバルの土俵であったとき、その企業は高い確率で撃退されます。コンビニが値引き競争に参加すれば、その先には値引きを得意とするスーパーマーケットが待っています。同じように百貨店が日常領域に入り込めば、その道を極めてきた総合スーパーや量販店が待ち構えています。その領域に適したビジネスモデルを携えて。

ただこのコンビニと百貨店という2つの業態の存在意義に関する問題。当事者は同じセブン&アイ・ホールディングス。偶然でしょうか。



事業システム戦略―事業の仕組みと競争優位 (有斐閣アルマ)

事業システム戦略―事業の仕組みと競争優位 (有斐閣アルマ)

  • 作者: 加護野 忠男
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2004/03
  • メディア: 単行本



「競争優位」のシステム―事業戦略の静かな革命 (PHP新書)

「競争優位」のシステム―事業戦略の静かな革命 (PHP新書)

  • 作者: 加護野 忠男
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 1999/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



ディマンド・チェーン経営―流通業の新ビジネスモデル

ディマンド・チェーン経営―流通業の新ビジネスモデル

  • 作者: 小川 進
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 単行本



ユニクロ・柳井正―仕掛けて売り切るヒット力

ユニクロ・柳井正―仕掛けて売り切るヒット力

  • 作者: 川嶋 幸太郎
  • 出版社/メーカー: ぱる出版
  • 発売日: 2009/06/13
  • メディア: 単行本



なぜユニクロだけが売れるのか―世界を制するプロモーション戦略と店舗オペレーション

なぜユニクロだけが売れるのか―世界を制するプロモーション戦略と店舗オペレーション

  • 作者: 川嶋 幸太郎
  • 出版社/メーカー: ぱる出版
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 単行本



攻防メガ百貨店

攻防メガ百貨店

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2008/04
  • メディア: 単行本



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ネットで政治献金 [ビジネスモデル]

どこにでも商売のタネは転がっているものです。

昨年のアメリカ大統領選挙や昨今の政治資金を巡るゴタゴタから,改めて注目を集めている個人献金。日本ではほとんど浸透していませんが,これを拡大させようと新しい動きが。

【毎日新聞 楽天:政治献金、ネットでも 27日めどにサイト開設】
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090708ddm001010053000c.html

楽天が献金の対象となる全政治家のプロフィルや主張を紹介したホームページを開設し、契約を結んだ政治家その中に献金ボタンを設置することができるという仕組みを提供。クレジットカードを通してお金がやり取りされるというものです。

もちろん楽天は手数料を取ることでビジネスとして成立させることになります。ヤフーが提供している政治関連のサイトとも連動しながら利用者の拡大を目指すそうです。

このサービス自身も興味深いのですが,私が注目したのは決済に利用されるカードのこと。当面は楽天傘下のカードしか利用できないそうですが,そもそもこのようなカード経由の献金の仕組みは,一部の政治家が既存の大手カード会社に以前から提案していたものです。

しかし大手だからこそ,記事にもあるように特定の政治色がつくことを嫌って二の足を踏んでいたところを,新興企業である楽天がいち早く実現させてしまったというものです。楽天は今後,他のカードでの決済が可能となるように,カード会社へ働きかけて行くそうですが,大元なる仕組みを楽天が抑えてしまったことは大きな意味があります。

新興企業,中小企業が大手と同じ発想,スピードでものを考えていてはビジネスには勝てません。大企業だからこそできないところをいち早く狙い撃ちする。最初にも書きましたが,商売のネタはどこにでも転がっているわけですから。


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ユニクロ好調続く [ビジネスモデル]

ユニクロの進撃が続いています。
【日経新聞 ユニクロ、6月の売上高6.4%増 8カ月連続プラス】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090702AT2F0201602072009.html

世の中の景気が悪くなると,逆に調子がよくなるのがユニクロとマクドナルド。高いコストパフォーマンスが評価されるのがその強さの秘密だと言われますが,中には「消費者の低価格志向に乗っただけ」という皮肉めいた論評も時々聞かれます。

しかし同社(マクドナルドもそうですが)の強みは,「仕組みが整備されていること」と「ぶれないこと」ではないかと私は考えます。

今は絶好調のユニクロですが,業績は浮き沈みを繰り返しています。ビジネス雑誌はそのたびに,ユニクロの成長神話は終わった,と酷評していました。こう書かれてしまうと多くの企業,とりわけ新興企業はそのとき調子のよい企業の模倣をはじめてしまいます。例えばユニクロが高価格路線にシフトするといった具合です。

しかしユニクロはぶれませんでした。厳しいときも自分たちの基本スタイルは変化させずに,それをブラッシュアップさせることを続けてきました。彼らは事業の仕組みが違う分野に乗り出しても,それがうまくいかないことを学習していたからです。

過去と同じように,多くの企業がユニクロ「的」な商品を出して追随するでしょう。しかしこのブログでも再三取り上げているように,コストパフォーマンスのよい商品を作って販売する「仕組み」を持っていない限り,低価格路線は必ず失敗します。たんなる値下げは,経営としては最悪の手法です。

環境変化に合わせて行くことも企業にとって大切なことですが、一方で自分たちのホームポジションがどこであり,事業の「型」は何であるかをしっかりと思い起こすことも大切です。つらい時期にこそ,じっくりと問題点を洗い出して再強化する。ユニクロの好調は,たんなる景気のおかげではありません。


なぜユニクロだけが売れるのか―世界を制するプロモーション戦略と店舗オペレーション

なぜユニクロだけが売れるのか―世界を制するプロモーション戦略と店舗オペレーション

  • 作者: 川嶋 幸太郎
  • 出版社/メーカー: ぱる出版
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 単行本



ユニクロ・柳井正―仕掛けて売り切るヒット力

ユニクロ・柳井正―仕掛けて売り切るヒット力

  • 作者: 川嶋 幸太郎
  • 出版社/メーカー: ぱる出版
  • 発売日: 2009/06/13
  • メディア: 単行本



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