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トヨタ リコール問題(2) [ビジネスモデル]

昨日に引き続き,トヨタのリコール問題です。

日本のみならず、世界のナンバーワン自動車メーカーになったトヨタが、なぜあのような対応しかできなかったのでしょうか。私の研究テーマである事業の仕組みという観点から仮説を考えてみました。それが,

ミスを出さないことが前提の事業の仕組みとミスを出すことを前提とした事業の仕組み

の違いなのではないかと。

ご存じの通り,トヨタの品質管理は世界に冠たるものであると言われています。コストダウンばかりが指摘されますが,高い品質を生み出すために徹底してミスを起こさないための事業の仕組みを生み出しています(ミスというのはイコールコストアップです。ミスが減ればコストダウンになります)。

ただこの事業の仕組みはミスが発生したときに大混乱を起こす可能性があります。なぜなら経営活動のすべてのベクトルがミスを「起こさない」方向に向かうわけですから,ミスが「起きる」ことなど考えいないわけです。万全のセキュリティシステムを構築している美術館が,一旦破られてしまうとその後は泥棒に対して完全に無力なのと似ているかもしれません。起きないはずのものが起きているわけですから,何をどうしてよいかわからないわけです。

日本の企業は比較的,この前提を持った事業の仕組み,文化が多いように思います。社内会議などでもそうでしょうが,失敗したときのこと,目標が未達の時の備えについてあらかじめ指摘すると「なんだ?お前はやる前から失敗する気でいるのか」と叱られてしまいます。

それに日本人は比較的きっちりしていますから,ルーチンワークと言いますか,決められた手順をしっかり守ってミスを防ぐという習慣があります。製造業では作業手順,サービス業ではマニュアルの遵守です。その結果,手順から外れる出来事が起きると逆に回復に時間がかかります。典型例は鉄道。日本の鉄道運行は世界一正確ですが,一方で何かトラブルが発生すると復旧に途方もない時間がかかることもしばしばです。原因特定ができないのです。

一方,欧米企業は比較的ミスが発生することを織り込んだ事業の仕組みを構築しているように感じます。決して彼らがいい加減という意味ではありません(日本人からすれば...ですが)。人間ですからミスは起きるものだと考えているので,その対応も早いことが多いです。

以前もお話ししましたが,ダイソンの掃除機の事例がまさにそれでした。我が家で使っているダイソンのモーターがダウンしたことがあります。買ってからそんなにたっていないので,やっぱり外国ものはダメだなあと怒り半分,あきらめ半分でサービスセンターに電話をしました。

すると製品番号と保証書番号を聞かれ,「すぐに業者に取りに行かせます。お客様はホースだけ外しておいて下さい。箱もこちらで手配します」とのこと。翌日にはメーカー指定の宅配業者の方が到着。私は本体を渡すだけです。しかし修理ですから,こりゃあ下手すると1ヶ月ぐらい待つのでは?と思っていたら,なんと中2日で戻ってきたではないですか。もちろんちゃんと動いています。

あまりの素早さに驚き,サービスセンターに再び電話。状況を聞くとこれまた驚く回答。

「お客様の製品で発生した現象は,これまでに報告例がありません。ですから原因究明をしてから修理すると相当な時間,お客様にご不便をおかけすると思いましたので,モーターを新品に取り替えご返送しました。何か不都合な点はありましたでしょうか」

とのこと。もちろん不都合などありません。さらに聞けば,取り替えたモーターはこれから検査して原因究明をします。この結果についてはお伝えできないと思いますが,ご了承下さいとのこと。

驚きました。これ以来,私はダイソンの大ファンです。日本のものに比べるとかなりお高いですが,その価値は十分あります。

もちろんこの裏には,保険を整備していたり,修理ができたモーターを別の形で使う(私のモーターもじつは再生品かもしれません)などしっかりとした事業の仕組みがあるはずです。つまり壊れることもあるという前提に立っているので,その準備ができていたわけです。

トヨタの場合,必要以上に規模を拡大してきましたから,リコールに伴う損失も大きくなることを恐れたのかもしれません。しかしミスは起きるもの。それをどうリカバーするのか。これも大事なテーマだと思います。


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