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ウィニー無罪判決 [ユーザーイノベーション]

非常に難しい問題ですが,司法が1つの判断を下しました。

【読売新聞:ウィニー開発者に逆転無罪…「著作権侵害の意図なし」】
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091008-OYT1T00372.htm?from=top

ファイル共有ソフト「ウィニー」の開発者が,著作権法違反ほう助罪に問われていた事件ですが,大阪高裁が,「著作権侵害の目的に使うようネット上で勧めてウィニーを提供したという積極的な意図は認められず、ほう助罪は適用できない」ということで,逆転無罪を言い渡しました。

【読売新聞:ウィニー無罪判決、被告「技術者にいい影響」】
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20091008-OYT8T00730.htm

ウィニーは確かに違法な使われ方をすることが多いようですが,だからといって開発者にその責めを過度に負わせることは,技術開発の停滞を招きかねません。何事にもよい面,悪い面があるわけで,片方の現象だけを取り上げて開発者を断罪することはよくないでしょう。ダイナマイトは建設現場など多くの場面で人々を幸せにしましたが,一方で多数の人を殺害する道具となってしまったのと同じです。イノベーションにはそんな性質があるですから,それは仕方のないこと。

また大学で法律を学んだもの,それもたまたま罪刑法定主義(詳しくはここ)を先行していたものとしては,今回の事件を有罪に持って行くのはあまり適切ではないように感じます。日本社会では道義的責任がよく言われますが,それはあくまでも倫理的な問題であって刑罰を科すかどうかとは別問題。法律で定まっていないことを,無理矢理「解釈」で当てはめることは罪刑法定主義の理念に著しく反します。きちんと立法によって措置すべき問題です。


図解でわかる刑法 (入門の法律)

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  • 作者: 新保 義隆
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2006/11/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



ただ今回の判決を聞いて思ったのですが,開発者と著作権者。どちらも権利を濫用ししすぎているように感じます。開発者はある時点で,このソフトが違法に使われていることが多いことに間違いなく気付いているはず。それであれば,ソフトを開発したものとしてすべての使い方をユーザーに委ねるのではなく,なんらかの対策を講じるのもまた開発者の責任でしょう。

一方著作権者も,ひたすら権利を守ることに終始し,それを使う(楽しむ)ユーザーへの配慮が欠けていることもまた事実。社会福祉(social welfare)の視点から考えると,著作物を含むイノベーションの独占は非効率以外の何者でもないですし,その社会全体としての不利益を受け入れてまでイノベーターに利益を独占させている意味を,彼らは考える必要があるように思います。

権利の裏側には,義務と責任が伴います。権利を主張する以上,それにともなう責任を果たさなければ健全なイノベーションは進まないのではないでしょうか。とくにユーザー・イノベーション,オープン・イノベーションという新しい形のイノベーションが増えています。私たちの意識も変えていく必要があるように感じます。


民主化するイノベーションの時代

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  • 作者: エリック・フォン・ヒッペル
  • 出版社/メーカー: ファーストプレス
  • 発売日: 2005/12/09
  • メディア: 単行本



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