数字の罠 ペットボトルリサイクル [環境問題]
政府がPETボトルの回収・再使用を目指して,デポジット(預かり金)制度の導入を検討しているそうです。
【毎日新聞】http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080229-00000065-mai-soci
最近は分別回収があたり前になり,PETボトルのリサイクル率も高まっている,と多くの人は思っているのではないでしょうか。確かにペットボトルリサイクル推進協議会(http://www.petbottle-rec.gr.jp/movie.html)では,このような回収率は66%を超えたというデータを発表していますし,ホームページでもこのようなグラフを掲示しています。
そしてこのグラフのタイトルは「統計データ PETボトルの生産量およびリサイクル状況」。これだけを見るとリサイクルもようやく進んでいるのだなと思ってしまう人がいても不思議ではありません。マスコミに発表されるときも「リサイクル率66%」というタイトルがつくことも少なくないのですから。
しかしこのデータは大きなトリックがあります。勘の良い方はおわかりでしょうが,この数字はあくまでもPETボトルの生産量と回収量から割り出したものであり,早い話「回収率」なのです。回収されたPETボトルが再利用されていることを保証したわけではないのです。
それではリサイクル率はというと,2006年度に指定法人ルートでは106,000トン,法人を経由しないものをあわせても189,464トンですから,回収量の半分程度しかリサイクルはされていません。つまりPETボトルの販売量に対するリサイクル率は30%程度であるということなのです。そしてそのリサイクル率は低下してきています。
【詳しくはこちら】 http://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/2007/p10.html
以前より紹介している武田教授の「リサイクル率6%」は大げさにしても,回収は進んでもリサイクルはまったく進んでいないわけです。それなのに,出てくる数字はうまく量と率を使い分けてごまかしをしているとしか思えないのです。私が考えるに,今回のデポジット制の導入もリサイクルの限界が見えてきたからではないかと思います。回収したのにリサイクルされていないPETボトルはどうなっているのか。多くは焼却されているという武田教授の主張は,恐らく正しいのではないかと思わざるを得ません。そうなると,生ゴミだけを焼却するより,PETボトルと一緒に燃やした方が石油を使う量が少ないという話(生ゴミは燃えにくいので,結局石油を掛けて燃えやすくしなくてはいけない)も妥当となります。苦労して分別回収しているのに,結局環境に負荷をかけているということになってしまうのです。
何度も繰り返しているのですが,エコ問題はこのようなうさんくささが常につきまとっています。誰もが「No」と言えない(言いにくい)テーマですから,マーケティングコンセプトとしては最適なものであることは事実です。しかし,それが本当に環境問題の解決に繋がっているのか。これはまた別問題です。数字を正しく使い,冷静な判断をすることが必要であると考えます。「数字はともかく,リサイクルしないよりした方がいいに決まっている」と考える人があまりに多すぎるのではないでしょうか。
環境問題に限らず,感覚的な議論に流されない姿勢が大切だと思います。
【毎日新聞】http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080229-00000065-mai-soci
最近は分別回収があたり前になり,PETボトルのリサイクル率も高まっている,と多くの人は思っているのではないでしょうか。確かにペットボトルリサイクル推進協議会(http://www.petbottle-rec.gr.jp/movie.html)では,このような回収率は66%を超えたというデータを発表していますし,ホームページでもこのようなグラフを掲示しています。
そしてこのグラフのタイトルは「統計データ PETボトルの生産量およびリサイクル状況」。これだけを見るとリサイクルもようやく進んでいるのだなと思ってしまう人がいても不思議ではありません。マスコミに発表されるときも「リサイクル率66%」というタイトルがつくことも少なくないのですから。
しかしこのデータは大きなトリックがあります。勘の良い方はおわかりでしょうが,この数字はあくまでもPETボトルの生産量と回収量から割り出したものであり,早い話「回収率」なのです。回収されたPETボトルが再利用されていることを保証したわけではないのです。
それではリサイクル率はというと,2006年度に指定法人ルートでは106,000トン,法人を経由しないものをあわせても189,464トンですから,回収量の半分程度しかリサイクルはされていません。つまりPETボトルの販売量に対するリサイクル率は30%程度であるということなのです。そしてそのリサイクル率は低下してきています。
【詳しくはこちら】 http://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/2007/p10.html
以前より紹介している武田教授の「リサイクル率6%」は大げさにしても,回収は進んでもリサイクルはまったく進んでいないわけです。それなのに,出てくる数字はうまく量と率を使い分けてごまかしをしているとしか思えないのです。私が考えるに,今回のデポジット制の導入もリサイクルの限界が見えてきたからではないかと思います。回収したのにリサイクルされていないPETボトルはどうなっているのか。多くは焼却されているという武田教授の主張は,恐らく正しいのではないかと思わざるを得ません。そうなると,生ゴミだけを焼却するより,PETボトルと一緒に燃やした方が石油を使う量が少ないという話(生ゴミは燃えにくいので,結局石油を掛けて燃えやすくしなくてはいけない)も妥当となります。苦労して分別回収しているのに,結局環境に負荷をかけているということになってしまうのです。
何度も繰り返しているのですが,エコ問題はこのようなうさんくささが常につきまとっています。誰もが「No」と言えない(言いにくい)テーマですから,マーケティングコンセプトとしては最適なものであることは事実です。しかし,それが本当に環境問題の解決に繋がっているのか。これはまた別問題です。数字を正しく使い,冷静な判断をすることが必要であると考えます。「数字はともかく,リサイクルしないよりした方がいいに決まっている」と考える人があまりに多すぎるのではないでしょうか。
環境問題に限らず,感覚的な議論に流されない姿勢が大切だと思います。
>多くは焼却されているという武田教授の主張は,恐らく正しいのではないかと思わざるを得ません。
>環境問題に限らず,感覚的な議論に流されない姿勢が大切だと思います。
自分が実践しないことを他人に求めるのはいけません。多くが輸出されている(この記事をあなたが書いた時点ではかなりの量が中国に輸出された)ので、輸出分は統計の取りようがなくリサイクル率に反映されないと考えるのが普通ですよ。
by 通りすがり (2009-11-29 02:01)
コメントありがとうございます。お返事が遅くなりました。
最後の一文を読んでいただければありがたいのですが、何事も感覚的な議論を避けた方がよいのですよね,というのがこの記事の主眼です。数字になっていないことを、そうに「違いない」,こう考えるのが「普通」として議論することの危うさをしてきしたわけです。まずはその総論に対してご意見をいただければと思います。
各論についてですが,中国に多く輸出されていることは私も存じ上げています。統計の取りようがないとされていますが統計は出ています。
http://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/2008/p10.html#p02
2006年で30万トン弱、2007年で36万トン強です。私が記事を書いた2008年はこの分だと伸びていそうですが、9月のリーマンショック以来,その輸入量が減っていることは報道で伝えられています。2007年の数字より劇的に伸びているとは考えにくいと思われます。
ただこの数字は正式ルート(記事で用いたデータの数字)以外の回収も含まれていますので,リサイクル推進協議会もF値という修正値を出しています。そうなるとそれぞれ約23万,約30万トンが輸出量となります。
おっしゃるようにこれをリサイクルだとすれば、その率は上がります。ただ私がこの記事を書いたときには、この情報を発見することができなかったので、ある情報だけで議論を進めたわけです。繰り返しますが「だろう」「違いない」「普通」ということが議論を避けるべきだと思っていますので。
このデータが加わると、武田さんの「ほとんど」が焼却ということは大げさなように思います。その一方で、このデータが加わっても、リサイクル推進側が使う「ほとんど」リサイクルというのにも遠いことがわかります。
数字だけではダメですが、しかしできるだけ数字を使った議論をするように、少なくとも私は心がけ「実践」しています。ご存じだとは思いますが、リサイクル可能であっても廃棄物を先進国から発展途上国へ輸出することは国際条約違反の疑いもありますから、この数字だけを取り上げて、リサイクルが進んでいると済ませるのもよくないでしょうし。
しかし、通りすがりさんのように、少なくとも何かの数字を根拠に反論されようとする姿勢は非常に素晴らしいと思います。一番よくないのは、誰かの意見を自分で検証することもなく鵜呑みにすることだと思いますから。
by ドクター (2009-12-04 00:24)